JR四国・徳島バスの「共同経営」は地方衰退の防波堤となるか? 全国初の試み、増収以上に必要な公共交通の未来とは

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徳島県の牟岐線と徳島バスの共同経営が注目を集めている。増収目的より重要なものとは何か。

公共交通の再編が生み出すもの

JR阿南駅周辺・居住誘導区域及び都市機能誘導区域図(画像:阿南市)
JR阿南駅周辺・居住誘導区域及び都市機能誘導区域図(画像:阿南市)

 JR四国だけでなく、徳島バスの経営も厳しい。阿南市内に多くの路線を持つ徳島バス阿南は、自治体からの補助金で路線バスの運行をなんとか維持している。路線バスの一般的な基準は「走行100万km」だが、2019年時点では保有する12台のうち

「8台」

もが100万kmを超えているとして、地元紙で取り上げられた。繰り返すが、共同経営によって両社の経営が大幅に回復するわけではない。あくまで再編の一環だ。

 牟岐線は2020年、阿波海南~海部間を廃止し、阿佐東線を運営する第三セクターの阿佐海岸鉄道に編入した。その理由は、阿佐東線が線路を直通できるデュアル・モード・ビークル(DMV)を導入したことによるものだ。

 阿佐海岸鉄道はDMVを導入したことにより、線路に縛られることなく路線の範囲を拡張している。共同経営の実施は、これに続く公共交通の再編だ。その目的は、鉄道とバスを区別することなく、沿線住民を運ぶ

「公共交通の軸」

として確立させることにある。

 鉄道とバスを軸にして、コミュニティーバスや乗り合いタクシー、各種のモビリティなどを運行することで、公共交通を効率よく利用できるようにする。その実現に向けた第1歩が、今回の共同経営だ。鉄道とバスとの相互利用にだけに目を向けると効果は微々たるものだが、その周辺の交通手段を整えて、ようやく効果が見えてくる。

 コンパクトシティーを志向する阿南市では、駅周辺への病院や公共施設の集約を進めており、共同経営から始まった公共交通機関再編にかける期待は大きい。牟岐線の事例は、鉄道・バスともに路線の維持・再編が

「補助金額や存廃のみがテーマではない」

ことを教えてくれる。

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