JR四国・徳島バスの「共同経営」は地方衰退の防波堤となるか? 全国初の試み、増収以上に必要な公共交通の未来とは

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徳島県の牟岐線と徳島バスの共同経営が注目を集めている。増収目的より重要なものとは何か。

収益増加額は5年間で「40~50万円」

徳島県阿南市にある阿南駅(画像:(C)Google)
徳島県阿南市にある阿南駅(画像:(C)Google)

 例えば、徳島駅から鉄道とバスを乗り継いで牟岐駅に向かう際、徳島~阿南間のJR運賃は560円。阿南~牟岐間はバス運賃1100円の合計1660円で、全区間でJRを利用した場合(1470円)より高くなっていた。当然、改善を求める声が沿線で上がっていた。

 そうしたなかで、起きたのが

・新型コロナウイルスの感染拡大による乗客減少
・独占禁止法特例法の施行

だった。これを受けて、JR四国と徳島バスは公共交通機関の維持に向けて共同経営の合意に至った。

 現在、阿南駅から牟岐方面までは、午前6時22分から午後10時22分までの間、毎時1本の列車が走っている。対する徳島バスは日中4本。利便性が増すのはわずかな本数だ。

 この共同経営で両社が想定する収益増加額は2022年度からの5年間で

「40~50万円」

とわずかなものだ。今回の共同経営はあくまで、利用者が増加するかどうかの実験といった側面が強い。

 JR四国が、共同経営開始から1か月がたった2022年5月に発表したデータによれば、4月1日から17日までの間、JRの乗車券を使って阿南~浅川間で高速バスを使った人は

「1日平均1.71人(延べ29人)」

だった。前年度に阿南~甲浦間で高速バスを利用した人は1.42人だったので、わずかながら増加している。

100円の収入を得るために「1185円」の経費

徳島県海陽町にある牟岐線の終着駅・阿波海南駅(画像:(C)Google)
徳島県海陽町にある牟岐線の終着駅・阿波海南駅(画像:(C)Google)

 ひとり分の人件費にも満たないような増収にもかかわらず、共同運営が成立した背景には、公共交通機関そのものが消滅してしまいかねない危機感があったからだ。

 5月に公表されたJR四国の2020年度の線区別収支は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、全線が赤字になった。なかでも、牟岐線の阿南~海部(一部路線の阿佐海岸鉄道への委譲で2020年11月からは阿波海南駅)の区間は、100円の収入を得るための経費が

「1185円」

で、高知県四万十町と愛媛県宇和島市を結ぶ予土線の「1401円」に次ぐ、ワースト2位になっている。

・無人駅のトイレ廃止
・券売機撤去

といったコスト削減は行われているものの、追いついていない。

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