JR四国・徳島バスの「共同経営」は地方衰退の防波堤となるか? 全国初の試み、増収以上に必要な公共交通の未来とは

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徳島県の牟岐線と徳島バスの共同経営が注目を集めている。増収目的より重要なものとは何か。

なぜこのような事例が誕生したのか

牟岐線(画像:写真AC)
牟岐線(画像:写真AC)

 JR四国が徳島県南部で運行する牟岐線(むぎせん)と、徳島バスの共同経営が注目を集めている。時期は2022年4月からで、牟岐線と並行して走る徳島バスの高速バス「室戸・生見・阿南大阪線」の一般区間で、牟岐線の駅に相当する停留所で下車した際、牟岐線に乗車したものと見なして乗車券を使用できるというサービスだ。

 対象となるのは、阿南駅と阿南バス停、阿波橋駅と橘営業所、および名称を同一とする由岐・日和佐・牟岐・浅川の各駅・バス停である。バスの運賃はJRと同額で、乗車券も使える。JR定期券や青春18きっぷなどの企画乗車券と同じ形だ。JRと運賃が同額になることで、バスの運賃は安くなる。阿南~牟岐のバスは1100円だが、JR乗車券を利用すれば970円となるのだ。

 独占禁止法特例法の施行(2021年6月)以降、熊本市で同一路線を走る複数のバス会社が共同経営を始めるなど、乗客減に対する交通事業者の動きは活発化しているが、鉄道とバスの共同経営はこれが初めてだ。

 なぜこのような事例が誕生したのか。そのきっかけは、2019年3月のダイヤ改正で牟岐線の阿南駅以南が減便されたことに始まる。

 徳島バスは2018年5月、JR四国と徳島県から並行区間の路線開設を打診された。しかし、運転手不足から新規路線開設は困難と判断。そこで、大阪市と高知県室戸市を結ぶ高速バス「室戸・生見・阿南大阪線」の阿南市~高知県東洋町の区間を路線バスとして運行することを決めた。

 この時点では、乗り換えの際に運賃を初乗りで計算する設定となっていた。なぜなら、バスに乗客が流れて鉄道が減便されないためだった。

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