交通事故でおなじみの「レッカー車」が、災害時の緊急車両として全然浸透しないワケ
レッカー車の出動件数は微増
読者の皆さんは、「レッカー車」にどのようなイメージを持っているだろうか? 一般的には、故障や事故で動かなくなった車両を運ぶ作業車だろう。まさに、ドライバーにとって「救世主」と言えるが、助けを求めるのは、なにもドライバーに限ったことではない。災害時における被災地住民の「救世主」でもあるのだ。
若年層の車離れや車両の性能向上の結果、レッカー車の出動件数は年々減少傾向にあると思われがちだが、日本自動車連盟(JAF)調べによると、2021年度のレッカー車の出動件数は、
「215万8586件」
と前年度101.9%と微増しているのだ。
最近の自動車は、昔に比べて止まりやすくなっている。複数のマイコン(超小型コンピューター)で制御されているため、ひとつでも異常が出れば止まってしまう。いったん故障が発生すると、その場での修理が難しく、レッカー車で修理工場などに運ばざるを得ない。
また、損害保険の付帯サービスとしてのロードサービスが一般的になり、レッカー車を気軽に手配できようになったこともあり、出動依頼が増加している。交通、社会を円滑に回すためにも、レッカー・ロードサービス事業者は必要不可欠だ。その故障・事故車の撤去することが、人の命を左右することにつながる。
連続する記録的自然災害
これからの季節は厳しい残暑に加え、台風や集中豪雨などの異常気象が心配される。異常な雨量で道路が冠水し、走行不能となった多くの車両が道路上に放置される光景をテレビで目にしたことがある人も多いだろう。
また毎年冬になると、大雪による高速道路や幹線道路の立ち往生が相次ぎ、誰しも巻き込まれる可能性がある。さらに昨今の自然災害は、記録的大雨や記録的大雪など、
「記録的」
という言葉が強調され、短いスパンで更新されている。
このように災害で動かなくなった放置車両が、災害地へ向かうレスキュー隊や救急車、自衛隊車両など救助車両の進路をふさぎ、救助が遅れて、助かる命も助からないといった事態を招く恐れもある。関越自動車道で起こった大雪による52時間に及ぶ立ち往生は記憶にも新しいが、きっかけは1台の大型トラックによるものだった。
なぜ、1台の大型トラックがこのような事態を巻き起こしたのか。そこには、迅速に動けない理由があった。