自衛隊も物流業界もどうして今「鉄道」に頼るのか? 根本はまったくもって同じ理由だった
自衛隊もモーダルシフトか
コロナ禍による乗客の激減、地方路線の維持など、鉄道を取り巻く状況は厳しいものとなっている。その一方で鉄道への関心を高めているのが、物流業界と、意外なことに自衛隊だ。モーダルシフト(環境負荷の小さい鉄道や船舶を使った貨物輸送への転換)を進めている物流業界はともかく、どうして自衛隊が鉄道に関心を寄せているのか、ここでは鉄道と安全保障の切っても切れない関係を紹介する。
日本の物流を取り巻く環境は年々厳しくなっている。少子高齢化による深刻なドライバー不足がその良い例だ。トラックドライバーのなり手が年々減少しており、日本経済を支える物流への支障が懸念されている。また、世界的な脱炭素の流れを受け、当時の菅義偉総理大臣は2020年の臨時国会における所信表明演説において、2050年にカーボンニュートラル、つまり温室効果ガスの排出をゼロにするという方針を発表した。
こうした流れを受け、注目されているのが鉄道だ。鉄道は、少ない人数で大量の貨物を運ぶことができ、しかも二酸化炭素排出量が少ないという特徴を持っている。
かたや、地方のローカル線は利用客の減少に苦しんでおり、廃線の危機を迎えている路線も少なくはない。この状況をさらに悪化されたのがコロナだ。コロナによって、利用者がさらに減少し、鉄道の経営を悪化させている。多数の赤字路線を抱えるJR各社は相次いで、路線の経営状況を発表し、廃線を含めたローカル線の在り方を問うようになってきた。
こうした厳しい現状を受け、国土交通省は2022年3月17日から今後の鉄道物流の在り方に関する検討会を開催し、鉄道貨物の在り方について有識者を交えての議論を開始した。この検討会には国土交通省や有識者だけでなく、鉄道事業者や物流事業者も呼ばれ、ヒアリングの対象となっている。
2022年5月19日に開催された第3回検討会に、ヒアリング対象として招かれたのが防衛省だ。防衛省はヒアリングにおいて、
「自衛隊における鉄道輸送」
と題したプレゼンテーションを行っている。その中では日本周辺の安全保障環境の説明から、ウクライナを例とした有事における鉄道輸送の重要性、そして自衛隊が鉄道輸送をいかに活用してきたのかを説明している。
この検討会における資料からは、自衛隊が鉄道輸送を重視していること伺わせ、一部で話題ともなっている。