交通事故でおなじみの「レッカー車」が、災害時の緊急車両として全然浸透しないワケ
レッカー車は故障や事故で動かなくなった車両を運ぶだけではない。災害時における被災地住民の「救世主」でもあるのだ。
監督省庁の不在

災害発生時、放置車両を迅速に撤去して救援ルートを確保するためには、行政とレッカー・ロードサービス事業者との間に、消防や救急車と同じようにすぐに連絡できるよう
「災害時緊急ホットライン」
を確立しなければならない。
また、レッカー車が現場に急行するためには、自治体によって認可基準が異なる公共応急作業車(緊急自動車)の認定も必要となる。つまり、レッカー・ロードサービス事業者は緊急性がないと判断されているため
「災害時緊急車両 = レッカー車」
という発想がないのだ。もしあったとしても、事態を把握し、指示を出す監督省庁がないのでうまく機能しない。
連続する記録的自然災害

ただ、東日本大震災を契機に、自治体などと災害協定を締結するレッカー業界団体や事業者が増えており、横のつながりは強まっている。都道府県や政令指定都市、市町村には災害支援の訓練イベントなどがあり、例年、首都圏で「9都県市合同訓練」が実施されている。
しかし現在に至るまで、レッカー業界には産業分類上、業種認定はなく
「その他のサービス業」
に分類されている。上記で述べたように、監督庁も、確立した行政機関もない。横のつながりはあっても縦のつながりがないため、統制がとれないのだ。
首都圏ではレッカー車の台数を一定数確保できるものの、地方では絶対数が足りないので不可能となっている。業者も、レッカー業だけでは生計が成り立たず、兼業している人たちがほとんどだ。なぜこのような格差が生まれるのか。あらかじめ、国や地方自治体がレッカー車の確保台数を決めたり、応援がすぐとれるなどの態勢作りが必要ではないのか。
前述の立ち往生の原因となった大型トラックも、レッカー車が迅速に現場へ向かっていれば、あのような事態は起きなかったかもしれない。