別名「軍隊のアキレス腱」 実は戦術より重要な「軍事ロジスティクス」をご存じか

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「軍事ロジスティクス」という言葉はウクライナ侵攻以降、一般的に知られるようになった。今回はその言葉の意味するところについて解説する。

ロジスティクスは「後方」ではない

江畑謙介『軍事とロジスティクス』(画像:日経BP)
江畑謙介『軍事とロジスティクス』(画像:日経BP)

 以下、少し退屈になるかもしれないが、軍事ロジスティクスの定義や概念について改めて整理してみよう。

 ロジスティクスという言葉は、旧日本軍では通常、「兵站補給」と訳されていた。また、今日の防衛省・自衛隊では、「後方、後方補給、兵站」などとされるが、軍事評論家の江畑謙介は、その著『軍事とロジスティクス』(日経BP社、2008年)の中で、ロジスティクスとは後方ではなく、戦いの骨幹であり、それゆえ「後方」との表現は誤解を招きやすいと批判している。

 基本的に、ロジスティクスとはシステムとしての物流の管理であり、その語源はフランス語の「宿営」を意味する言葉であったという。その後、兵器、糧食、被服の運搬などに当たる「輜重(しちょう)」の機能を超えて、より高次あるいは広範な概念として、戦場で後方に位置して前線部隊のために必要物資の補給や後方連絡線(ライン)の確保などを任務とする「補給」「後方」「兵站」といった言葉あるいは概念が登場してきた。

 そうした言葉や概念が戦争の歴史と共に少しずつ進化を遂げているため、補給、兵站、ロジスティクスといった表現が混同されて用いられてきたのであり、これはある程度は致し方のないことだ。

 今日の日本で一般的に用いられている「後方」の定義について、例えば航空自衛隊は、「防衛力の造成、維持、発揮に必要な施設、装備品等を準備し、提供することおよびこれに関する諸活動の総称」、さらに簡潔に、「整備、補給、調達、輸送および施設に関する諸活動の総称」としている。

 また、陸上自衛隊では「後方」を、人事や兵站などをも含めた総称として用いている。ここでの「兵站」とは、「部隊の戦闘力を維持し作戦を支援する機能であり、補給を始め、整備、輸送、回収、衛生、建設、不動産、労務、役務等の総称」を意味する。また、人事が「後方」の任務のひとつとして位置付けられている事実に注目してもらいたい。

 さらに近年、軍事力の統合運用が進められている中、統合用語としての「後方」は、「防衛力の造成、維持、発揮に必要な人員、施設、装備品などを準備し提供することおよびこれに関連する諸所の活動の総称」となっている。

 いずれにせよ、定義の全体的な統一が必ずしもなされていないのが現状であり、曖昧さも多々残されているが、軍事ロジスティクス――「後方」――という言葉が広い意味を含んだ概念である事実をわかっていただけると思う。

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