別名「軍隊のアキレス腱」 実は戦術より重要な「軍事ロジスティクス」をご存じか
「軍事ロジスティクス」という言葉はウクライナ侵攻以降、一般的に知られるようになった。今回はその言葉の意味するところについて解説する。
ロジスティクスは軍隊の「アキレス腱」
軍事ロジスティクスの概念とその様相が時代と共に進化している事実は既に述べたが、今日では、必要な物資を必要な時に必要な数量だけ提供するとの「ジャストインタイム」との方策――経済界でいち早く採用され、その後、軍事の領域でも導入された――も、その限界に近づきつつあるとの見解も見受けられる。
軍事ロジスティクスは決して「魅惑的(グラマラス)」な領域ではないが、戦争に勝利するためには必要不可欠なものだ。だからこそ、例えば2003年のイラク戦争では、アメリカ軍の犠牲者の3分の2以上がロジスティクス担当の部隊から出たのだ。残念ながら、ロジスティクスが軍隊の「アキレス腱(けん)」であるとの事実は、今日に至るまで変わっていない。
この小論を締めくくるに当たり、1991年の湾岸戦争で多国籍軍のロジスティクスを実質的に統括したアメリカの将軍W・G・パゴニスの言葉を引用すれば、
「ロジスティクスという言葉には、科学的だと思わせる響きがある。既に答えがわかっていて、方法論も確立しているように思わせる。どちらかというと人間という要素とは無縁の分野だという印象を与えるかもしれない。しかし、この技術の黄金時代にあっても、この世界、この国には、物を持ち上げたり運んだりする人がほかの業務分野よりもっと多くいるのだ」(W・G・パゴニス著、佐々淳行監修『山・動く――湾岸戦争に学ぶ経営戦略』同文書院インターナショナル、1992年)
結局のところ、ロジスティクスは優れて人をめぐる問題でもあるのだ。軍事ロジスティクスはとても奥が深い。