別名「軍隊のアキレス腱」 実は戦術より重要な「軍事ロジスティクス」をご存じか
「軍事ロジスティクス」という言葉はウクライナ侵攻以降、一般的に知られるようになった。今回はその言葉の意味するところについて解説する。
ロジスティクスの重要性
クレフェルトは『補給戦』で、ロジスティクスについて語る際には具体的な数字や統計を示すことが重要である旨を強調しているが、よく考えてみれば、ロジスティクスはギリシア語の「計算を基礎とした活動」あるいは「計算の熟練者」を意味する言葉に由来するという。そのため、ロジスティクスには何らかの計算あるいは数字が付きものであるとのクレフェルトの指摘にもうなずけよう。
かつて古代ギリシアの哲学者ソクラテスは
「戦いにおける指揮官の能力を示すものとして戦術が占める割合はわずかなものであり、第一にして最も重要な能力は部下の兵士たちに軍装備をそろえ、糧食を与え続けられる点にある」(『ソクラテスの思い出』第3巻第1章)
と述べたそうだ。
また、第2次世界大戦を振り返ってイギリスの将軍アーチボルト・ウェーヴェルは、戦争とはその全てが行政管理と輸送に懸かっている、また、補給と輸送の要素について真に理解することが指揮官の全ての計画の根底である、と述べるに至ったが、この事実は今日の戦争にも確実に当てはまる。
近代以降の軍事ロジスティクスの概念を確立したとされるフランスの戦略思想家アンリ・ジョミニの『戦争概論』には、ロジスティクスはかつて部隊を宿営させ縦隊の行軍を維持し、ある地域に陣取らせることであったが、戦争が天幕なしでも敢行されるようになるに従って軍隊の移動は一層複雑なものとなり、その結果、参謀は従来以上に広範な機能を果たすようになった旨が記されている。
さらにジョミニは、ロジスティクスとは
「あらゆる可能な軍事知識を応用する科学以外の何ものでもない」
とも述べている。