モラル低下だけじゃない! 「救急車」を邪魔するドライバーが近年増えているワケ

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救急車の通行を妨げてはいけない、といったことが近年無視されるようになった。いったいなぜか。そこには、ドライバーのモラルだけではない実情があった。

救急車の音への苦情も

夜の救急車(画像:写真AC)
夜の救急車(画像:写真AC)

 また、東京消防庁には救急車に対する音の苦情が402件(2021年)寄せられており、消防庁の対応事例も公開されている。

●都民の声
「私の住んでいる場所では夜間によく救急車のサイレン音が聞こえるのですが、深夜の住宅街ではサイレン音を消すか、小さくしてもらうことはできますか。深夜の住宅街でサイレンを鳴らす必要はあるのでしょうか」

●回答
「救急車のような緊急自動車は、要件としてサイレンを鳴らし、かつ赤色の警光灯をつけなければならないとされております(道路交通法施行令 第14条)。また、サイレンの音量についても一定以上の音量で鳴動させることが定められており(道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第231条)、サイレンを鳴らさないことや一定の音量よりも小さくすることはできません。周囲への注意喚起のためにもサイレンは必要なものとなりますので、住民の皆様に配慮しながら使用させていただいております。ご迷惑をおかけしてしまい大変恐縮ではございますが、ご理解とご協力をお願いいたします」

 近年ではこうした声に対する配慮も含め、徐々にサイレンの音を大きくするシステムなど取り入れているが、救急車のサイレンそのものは道路運送車両法保安基準第49条で90db以上120db以下(前方20m計測値)と義務づけられ、この保安基準は1951(昭和26)年に定められて70年以上変わっていない。

 デジタルアンプになったとはいえ、音量そのものは変わっていないとすれば、要因はやはり先に上げた車の遮音性の向上と考える。

急がれるサイレンの技術向上

救急車(画像:写真AC)
救急車(画像:写真AC)

 解決策としては、人間工学の観点も取り入れた、サイレンの技術向上しかないだろう。故意の場合は、自分や大切な家族が運ばれていたら――という想像力を働かせてほしいが、現実問題としてモラル向上や他罰には限界がある。

 例えば、人間の聴覚は小さな音でも感知できる場合もあれば、大きな音でも聞こえてはいても感覚に訴えない場合がある。人間の「聞く力」「聞こえる力」の不思議だが、海外の救急車の中には

「人間がよく聞いてくれる」

とされるメロディーや波形を研究、採用している国もある。

 さすがに先の日本の基準は古すぎる。命を救うためにも、救急車および隊員の安全を守るためにもこうした海外の救急車のサイレンの技術向上もまた参考にすべきだろう。

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