物流業界における「DX実態調査」リポート発表 「人材不足」などが推進のボトルネックに
半数以上を占める推進企業

ソフトウエアのテストサービスなどを手掛けるSHIFT(東京都港区)は7月5日、物流業界における「DXの実態調査」の結果を発表した。DXとはデジタルトランスフォーメーションの略語で、ITを活用して企業などが新たな価値を創出することを指す。
調査対象は物流業界の企業に所属する、経営・ビジネス企画、ソフトウエア・システム開発に携わる役職者で、有効回答数は420人。調査は2021年12月上旬に実施された。
「DX推進の取り組み・実施状況」に関する質問で、「取り組みが完了した」「現在取り組んでいる」「取り組む予定がある」とした回答は56%だった。IPA「DX白書2021」における、業界横断での調査では『日本でDX推進に取り組んでいる企業は約56%』と報告されている。本結果から、物流業界においても同様の取り組み状況であり、DX推進が遅れていないことがわかった。
「DXを推進する上での課題」に関する質問で、「IT人材が足りない」「DX推進のノウハウをもった人材がいない、少ない」「推進できる体制がない」の回答が57%に及び、人材面の課題を抱えている企業が多いことがわかった。次いで「レガシーシステムがボトルネックになっている」「既存システムの運用に手一杯」が27%を占め、複雑な物流システムがDX推進の妨げになるのではないかという仮説にもつながった。
「人手不足の課題に対して、導入または検討しているテクノロジー」に関する質問で、インフラ基盤の変更やデータ統合を伴う最新技術クラウド、モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)が多くの回答を集め、新しいテクノロジーが導入または検討されていることがわかった。これらはインフラ基盤の変更やデータ統合を伴うものがほとんどであることが予想されるが、既存システムが複雑化している状態を放置している場合、特に、多くのアドオンやカスタマイズを伴う状況ではDX推進の妨げになりえる。
「基幹システムの状況(DX推進企業)」に関する質問で、「ソフトウエアのアドオン・カスタマイズにより複雑化」が33%で最多。次いで「既存システムが事業部ごとに構築されて複雑化(サイロ化)が29%と「2025年の崖」(経済産業省DXリポート)での指摘と類似した状況が確認された。特に、基幹システムがサイロ化していると、全体最適が難しく、新しい取り組みを進める上でも管理コストが増大する恐れがある。
SHIFTは今回の発表について
「今日、物流業界では、「物流の2024年問題」に代表されるように、ドライバー不足や環境規制対応など、多くの課題を抱えており、業務効率化や生産性向上を実現するDXに期待が寄せられています。物流業界のDXでは、サプライチェーン全体での最適化が求められますが、取引データを扱う商流と、モノの流れを扱う物流を連携させるため、物流システムの構造は 複雑化しやすく、これまでに築いた複雑なシステムで保守性に問題があると、DX推進の妨げになる恐れがあります。また、中小運輸業のIT導入の割合は45.5%で、全業種のうち2番目に低いとの調査もあります」
とのコメントを寄せている。