物流業界の「社会的地位」はなぜ上がらないのか? 後絶たぬ事故、コスト管理やモラル向上はどこへ

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業界全体のモラルが厳しく問われている物流。その現状を五つの観点から読み解く。

厳しく問われる業界のモラル

物流のイメージ(画像:写真AC)
物流のイメージ(画像:写真AC)

 物流業界のモラルが今、再び厳しく問われている。

 物流のステータスはなぜ上がらないのか。 本稿では「交通事故」「規制緩和」「効率化」「サプライチェーン」「競争戦略」という五つの観点から、業界の現状を考えていきたい。

1. 飲酒運転トラックによる悲惨な学童事故

 2021年6月、酒を飲んでトラックを運転した男が、居眠りをして下校中の小学生の列に突っ込み、児童5人を死傷させる事故が発生した。いまだ記憶に新しく、業界に関係するものとして誠に残念であった。

 法律により始業時の厳しい点呼が義務付けられ、残留アルコールのチェックも行われている。原則は運行管理者との対面だが、電話でも認められる。しかし本件は、業務を終えた帰りにコンビニで酒を買って飲むという、盲点を突かれたものだった。

 この直後、あるテレビ局が高速道路SAでの実態を放送したが、長距離ドライバーが売店で酒を買って車に乗り込むという驚くべき内容だった。

「仮眠してから出発する」と軽く発言していたが、これではトラック業界のモラルが厳しく問われるのは当然だ。

 一歩間違えば凶器ともなる手段を使い、道路という公の場でビジネスをする業界としては、大きな社会的責任を背負っている。

 しかし、あおり運転や高速道路における走行マナーなど、プロの行為として眼を背けたくなるような場面を往々にして目撃する。個人としての責任はもちろんだが、企業としての管理レベルをより高めていかなければ、使命を果たせない。

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