なぜ? 欧州で相次ぐ「電車賃」超大幅値下げ 日本は実現できないのか【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(7)
日本では電車運賃の値上げなどが相次いで報じられているが、欧州では各国が公共交通の利用促進に向けた政策を次々に打ち出している。「三方良し」と言える事業の内容を紹介する。
ブリュッセルの若者は年間1600円で乗り放題
ベルギーの首都ブリュッセルでは、2022年2月から、都市圏に居住している24歳以下の若者は従来の市内乗り放題の年間定期券499ユーロ(約6万7000円)を、なんと年間12ユーロ(約1600円)とした。ちなみに12歳未満は無料である。
空港線を除く都市圏の全ての公共交通機関が乗り放題となる政策であり、移動の回復や気候危機への対応、家計負担への緩和などを狙いとした経済政策の一環だ。チケットは券売機だけではなく、オンラインでも購入可能であり、ブラッセル交通局のアプリと連動したICカード(MOBIBカード)にも対応している。
オーストリア全土乗り放題の気候危機チケット

オーストリアでは、国内全ての公共交通機関が乗り放題となる「気候チケット(Klima Ticket)」の販売を2021年秋から順次開始した。
年間約1095ユーロ(約14万円)、1日換算で約400円を支払うと、長距離列車から普通電車、地下鉄やトラム、バスなど、国内全ての公共交通機関が1枚のチケットで乗り放題となるものだ。
気候危機への対策として、移動による温室排出ガスを減らし、移動による経済活性化を促し、国民の負担も減るという“三方良し”の持続可能な交通政策として、世界で注目の政策だ。
販売開始から100日目の2月3日時点で、すでに14万人を超える国民が気候チケットを購入したそうだ。なお、26歳未満および65歳以上、障害者は821ユーロと約2割引となっており、4人までの子供が同行する場合は年間110ユーロの追加で移動可能である。
もちろん、これらチケットはオンラインでの購入にも対応している。