「100円稼ぐのに2万円」の衝撃! 赤字ローカル線を揺るがす「維持か廃止か」、その先にある地殻変動とは
二項対立を超える地域交通

本当に見つめるべきは、地域全体の暮らしを支える移動の網の目を、どのような枠組みで組み立てていくかという視点だ。
こうした古い押し問答を超えた試みが2026年5月に動き出している。脱線事故のあと全線で運休が続く第三セクターの「いすみ鉄道」(千葉県、総延長約27km)の行く末を話し合う検討会議がそれだ。
ここでの議論は「すべて直す」か「すべて諦める」かという極端な二択に縛られず、一部の区間をバスへ切り替えるやり方を交えた三つの形を軸に現実的な落としどころを探っている。座長を引き受けた板谷和也教授が
「廃止か維持かという前提を置かず、さまざまな選択肢を比較考量し、最も地域に良い方を選びたい。タブーなく議論したい」(『産経新聞』2026年5月27日付け)
と語ったように、硬直した存廃論争から離れ、地域の身の丈に合ったインフラを柔軟に整えようとする空気が現場で生まれつつある。
こうした歩みを後ろから支えるのが、自動車産業の技術やデジタルツールの進化にほかならない。いつどれだけの人が乗り降りしたかというデータやAIによる需要の予測を生かせば、曜日や時間帯に合わせた無駄のないダイヤを組むことができる。さらに呼び出しに応じて走る乗り合い交通やデマンドバスを組み合わせることで、従来の路線バスでは手が届かなかった、家の玄関口から目的地までをつなぐ細かな移動の求めにも応えられるようになってきた。
これから先、地方の交通網は鉄道やBRT、デマンド交通に自動運転の技術を織り交ぜた
「統合型モビリティ網」
へと姿を変えていく可能性が高い。そこでの仕事は、儲かるか否かだけを見て一律に路線を切り捨てる引き算のやり方ではなく、限られた財源や人手をやりくりしながら地域全体の移動の枠組みをいかに広げていくかという“足し算”の思考になる。
人口が減り運転士の確保も難しくなるなかで、すべての線路を昔の形のまま守り続けるのは土台無理な話だ。とはいえ効率ばかりを追い求めてしまえば、お年寄りや学生たちの出かける機会が奪われ、地域の衰退に拍車をかけかねない。
交通インフラを会社の採算問題として突き放すのではなく社会の根底を支える土台として捉え直し、多様な技術や新しいプレイヤーの力を借りながら、誰もが安心して移動できる仕組みを各地へ広げていくことこそが、これからのモビリティ産業が進むべき道筋を語っている。