社用車は不要になる? 6.7万台に拡大した「カーシェア網」、アルトバン撤退後に浮かぶ“持つか・借りるか”の選択圧

キーワード :
,
社用車は“所有”から“利用”へ。カーシェア拠点は2018年1.49万→2022年2万超、車両5.1万台・会員263万人へ拡大。固定資産の変動費化が企業の車両戦略を揺るがす。

所有から利用へのシフト

社用車イメージ(画像:写真AC)
社用車イメージ(画像:写真AC)

 移動手段を確保するために、車両を資産として買い入れる。かつては当然とされたこの判断が、いま転換期を迎えている。長らく自動車の利用は、購入にともなう税負担や車検、メンテナンスといった維持コストをすべて所有者が引き受けることが前提であった。しかし、現在の交通インフラにおいて、運転することと所有することの結びつきは以前ほど強固ではない。レンタカーやカーリースに加え、特に都市部で急速に拠点を広げたカーシェアリングの存在が、移動の選択肢を多様化させている。

 交通エコロジー・モビリティ財団が公表した2024年3月の調査によれば、国内のカーシェア拠点は2万6797カ所に達した。前年比で17.6%増という伸び率は、このインフラが拡大の途上にあることを示している。毎年のように拠点数が積み上がる状況は、背景に資産を自社で抱え込むことへの忌避感があることを物語る。

 企業が車両を固定資産として保有する場合、常に価値下落という減価のリスクがつきまとう。さらに、数年後の売却価格を正確に見通すことは困難であり、不確実な中古車市場の変動に経営がさらされることになる。拠点が大幅に増え続けている事実は、こうした「所有のリスク」を外部へ切り出そうとする動きの現れといえる。多くの経営現場では、自社の敷地に車両を留めておくことの非効率さが意識されるようになった。長期的な投資として資金を固定化させるのではなく、必要な時に必要な分だけ支払う「事業費用」へと計上科目を付け替える。これによって手元のキャッシュの流動性を高めるという、戦略的な財務判断が現在の普及を後押ししている。

拠点網の拡大と利用基盤の形成

わが国のカーシェアリング車両台数と会員数の推移(画像:交通エコロジー・モビリティ財団)
わが国のカーシェアリング車両台数と会員数の推移(画像:交通エコロジー・モビリティ財団)

 2024年3月時点で、国内のカーシェアリング車両は6万7199台、会員数は469万5761人を記録した。前年比で車両数は約2割、会員数は5割増という急激な数字の推移は、移動手段としてのカーシェアがすでに一般的な社会基盤となったことを示している。特筆すべきは、これまで社用車を自社で保有してきた法人や個人事業主が、業務利用へとかじを切っている点だ。企業が車両を資産として持たず、必要な時だけ外部リソースを活用する背景には、合理的な判断が存在する。

 470万人に迫る会員規模は、働く人々が日常の生活圏でこの仕組みを使いこなしている実態を映し出している。休日や私生活で効率的なサービスを享受している社員にとって、アナログな鍵の管理や煩雑な運行記録が残る従来の車両管理は、改善すべき業務に見える。こうした現場レベルの感覚の変化が、経営層に対して「車両を持たない」という選択を促す要因となった。

 全国に6万台以上の車両が配置されている現状は、移動の不確実性を軽減するインフラとして機能している。自社で車を管理していれば、稼働が重なった際に車両が足りなくなる恐れがあるが、カーシェアという外部の供給網を組み合わせることで、必要なタイミングで確実に移動手段を確保できる。移動にともなう待機時間を短縮し、本来取り組むべき業務に時間を割く。こうした時間の使い方の変化が、結果として労働の質を高める一助となっている。

全てのコメントを見る