アフィーラ中止は挫折か――北米の変容と“過去”を捨てる経営【短期連載】ホンダ「EV敗北論」という虚像(2)
- キーワード :
- 自動車, EV, 本田技研工業, ホンダ「EV敗北論」という虚像
EV戦略転換と経営構造の再定義

ホンダが突きつけられたのは、EVにすべてを賭けるか、あるいはこれまでの形を守るかという、一見すれば二者択一の問いだった。しかし、実際の経営というものは、そうした単純な枠組みで語れるものではない。目まぐるしく変わる外部環境に合わせて、いかに手持ちの資源を賢く振り分けるか。今回下されたのは、まさにその最適解を求めるための冷徹な判断だった。
一連の開発中止と巨額の損失。ここから見えてくるのは、電動化の本質が新しい技術を追い求めることだけではないという事実だ。各国の政策や地政学リスク、そして揺れ動く市場の動向。それらを鋭く見極め、状況に応じて経営の資源を柔軟に入れ替える。今、自動車メーカーに問われているのは、そうした変化への適応力そのものだといえる。
これまでホンダの戦略は米国を軸に据えてきたが、その大前提が崩れた以上、計画を書き換えるのは経営として当然の帰結だろう。アフィーラの開発中止にしても、市場環境の変化に照らせば、選ぶべくして選ばれた結果にほかならない。
もっとも、ホンダはEVそのものを諦めたわけではない。変化の激しい時代に合わせて、歩みの進め方を修正しているのだ。2030年代に向けて、競争の主戦場はエンジンやモーターからAIへと移っていく。そうしたなかで、過去に立てた計画に固執し続けることは、かえって経営を危うくする。むしろ、ソニーとの協力を通じて得た「ソフトウェア中心の開発手法」を、ホンダの主力車種へ広く流し込むための下地がようやく整った、と見るべきではないか。
自動車産業の全体がいま直面しているのは、この不透明な時代にどう立ち向かうかという、経営の本質的な課題である。最大2.5兆円という巨額の損失は、ホンダがこれまでの「製造業」の殻を脱ぎ捨て、AIを核とした移動サービス企業へと生まれ変わるために支払った、重く、避けては通れない代償だったのだ。