アフィーラ中止は挫折か――北米の変容と“過去”を捨てる経営【短期連載】ホンダ「EV敗北論」という虚像(2)
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米EV市場の減速とIRA補助金打ち切りを受け、ホンダは最大2.5兆円規模の清算を決断。ソニー・ホンダのアフィーラ開発中止は、高級EV崩壊とAI主導の移動体競争への転換点を象徴する。
北米高級EV市場の構造変容

ソニー・ホンダが価格を公表した当初から、その高価格な設定には首を傾げる声が少なくなかった。
戦いの舞台となる米国で競い合うのは、メルセデス・ベンツの「EQS」やBMWの「i7」、あるいはテスラ「モデルS」といったそうそうたる顔ぶれだ。これらに対し、アフィーラの車体は一回りほど小さい。彼らは、映像や音楽といった車内での移動体験を極限まで高めれば、車体のサイズによらず十分に勝ち目があると考えていた。ソフトウェアの価値を重んじる新興メーカーを強く意識した戦略だった。
しかし、市場の動きは残酷だった。高価格帯のEV販売は、目に見えて落ち込み始めている。かつて市場を牽引したテスラ「モデルS」は、2022年の3.5万台をピークに、今や1万台を割り込むまでに急減した。「モデルX」も販売を半減させている。他の高級モデルも年間1万台の壁を越えられず、高級EVという枠組みそのものが、もはや十分な販売量を守れる場所ではないことが浮き彫りになった。
米国の富裕層にとって、電気が動力であること自体は、もはや対価を払うべき特別な価値ではなくなっている。彼らの関心は、AIによる自動運転の精度や、どれほど知能化が進んでいるかという点に移った。加えて、車体の大きさがそのまま社会的な地位を象徴する米国において、小ぶりな車体に1400万円を投じるという選択は、理解を得るのが難しかった。
本来、高価格モデルでブランドを確立し、その後に普及版へと広げていく筋書きだった。だが、採算の目処が立たないまま無理に販売を強行すれば、次世代のAI開発に投じるべき貴重な資金を使い果たすことになりかねない。結局のところ、アフィーラは事業としての成立が極めて困難であるという、冷徹な結論に至らざるを得なかったのだ。