アフィーラ中止は挫折か――北米の変容と“過去”を捨てる経営【短期連載】ホンダ「EV敗北論」という虚像(2)
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米EV市場の減速とIRA補助金打ち切りを受け、ホンダは最大2.5兆円規模の清算を決断。ソニー・ホンダのアフィーラ開発中止は、高級EV崩壊とAI主導の移動体競争への転換点を象徴する。
1.7兆円現金流出と事業清算プロセス

ホンダが、北米市場の再建を託していたはずの主力EV「ゼロシリーズ」や「アキュラRSX」などの開発中止に踏み切った。これにともなう設備や資産の目減り、取引先への補償といった損失は、2027年3月期までの累計で最大2.5兆円に達する見込みだ。なかでも、実際に手元から消えていく現金が1.7兆円にものぼるという事実は、事態の重さを物語っている。
この途方もない支出は、いわばこれまでの開発や生産のあり方を清算するための「授業料」といえるだろう。かつての経営判断が生んだ物理的な資産を一度手放し、AIを核とした新たな形へ移るための地ならし。それが行われたのだ。
多額の現金が流れ出す痛みは、決して小さくない。それでも、先行きが見えない事業に資金を投じ続けるリスクを断ち切ったことで、ハイブリッド車の強化や、米国以外の成長市場へリソースを振り向ける余地がようやく生まれた。
物理的な工場や拠点に縛られるこれまでの経営から、ソフトウェアの価値を高める方向へとかじを切る。今回の決断からは、過去の投資を将来の重荷にさせないという徹底した整理の意志が透けて見える。もともとEV事業は初期投資が重く、資金の回収には長い年月を要する。ホンダは、現在の市場環境でこれ以上の投資を続けるのは難しいと見切りをつけ、傷口を最小限に抑える道を選んだのだ。
主戦場である米国では、環境政策の変節に加え、関税の問題や高級車市場の冷え込みといった逆風が重なっている。今回の判断は、目先の数字を追うためだけのものではない。将来の成長を守るために、今あえて
「過去を捨てる」
という選択をした経営のリアリズムがそこにはある。