「その30km、本当に安全ですか?」 生活道路の事故1.9倍が突きつける、標識依存から“形で制御する”交通設計への転換とは
全国の人身事故は29万件台まで減少した一方、道幅5.5メートル未満の生活道路では死傷者数が広い道路の約1.9倍に達する。ゾーン30プラスは物理的制御で速度抑制を強め、死亡率3.0%に上昇する危険域を抑え込もうとする取り組みだ。
生活道路に残る事故の偏り

交通事故の総数が29万件台まで減る一方で、道幅5.5m未満の生活道路では、事故による死傷者数が広い道路の約1.9倍に達している事実は重い。これまで進められてきた大規模な道路整備の効果が、人の暮らしに近い場所までは十分に届いていない状況が浮かび上がる。
車の速度が時速30kmから40kmに上がるだけで死亡率が3.0%に高まることを踏まえると、標識などでの注意だけに頼るのではなく、仕組みとして速度を抑える方法を取り入れることは、安全を保つうえで避けにくい課題となっている。
ゾーン30プラスの広がりを妨げているのは、移動のしやすさが下がることへの抵抗感だ。ただ、被害者の48%が自宅から500m以内で事故に遭っているというデータは、便利さを優先することが、結果として身近な危険につながり得る現実を示している。物理的な制限を設けることは一時的に不便をともなうが、その一方で生活環境の安全を高め、長い目で見て地域の安心を守るための投資でもある。
現在は全国186か所にとどまる取り組みを広げていくには、安全の確保が地域全体の利益につながるという理解を共有する必要がある。道路を移動の速さだけに向けたものとせず、人が安心して歩ける場として整えていく姿勢こそが、これからの社会に求められる道路のあり方だろう。