「お前の代わりはいくらでもいる」の終焉――バス運転手を年収450万円で担い続けるのか? パイロット級の重責に見合わない対価という現実
運賃と費用構造の見直し

構造的な赤字を解消するには、まず逆算を欠いた運賃の決め方を改める必要がある。ほぼ全事業者が赤字という実態は、今の運賃が運行に必要な実際の費用を大きく下回っていることを示している。読者が示した
「ドライバーに年収600万円を払い、車両の更新も続けるには運賃はいくらになるのか」
という考え方は、実態に即した発想である。必要な人件費や車両費を積み上げ、そのうえで成り立つ価格を社会に示す必要がある。現在の水準では人が集まらないのであれば、人が集まる水準を前提にした価格を基準に置くべきである。これは一方的な値上げではなく、運行を続けられる状態に戻すための見直しである。
そのうえで、社会が選ぶ道は大きく三つに整理できる。ひとつめは、初乗り運賃が5割程度上がることを受け入れたうえで、今の運行を維持する道である。ふたつめは、運賃を据え置く代わりに、減便や路線の廃止を受け入れる道である。三つめは、
「税金による支えを増やし、不足分を公的に補う」
道である。岐阜県北部に位置する高山市が年間1300万円の予算を削り、住民が運行の一部を担う形に移行した事例は、専門の担い手だけで維持することが難しくなっている実態の一例である。実務的な改善も必要だ。
「クレジットカード決済の手数料負担を抑えるべきだ」
という声や、大型バスから小型車への切り替えで費用を抑える提案も出ている。こうした改善を積み重ねても、全体の流れを変える必要があることに変わりはない。
これまでは決まった運賃のなかで人件費を削ってきたが、これからは必要な働き方を先に決め、それを支える費用を運賃や公的な支援で確保する順序に改める必要がある。民間事業者に赤字を負わせながら公共の役割だけを求める形は見直すべき段階に来ている。採算が合わない路線については、事務所などの資産も含めて公的な側へ移すことも選択肢に入る。
人を削りながら安さを保つやり方を続けるのではなく、維持に必要な費用を正面から見ていくことが求められているのだ。