「主力車にハイブリッドがないなんて……」 マツダが直面する“100万台割れ”へのカウントダウンーー北米依存・電動化の遅れを回復できるか
利益を直接破壊する関税

トランプ政権の関税政策により、日本とメキシコから米国へ輸出する完成車には15%の関税が課される。マツダの試算では、2025年度の影響額は1625億円に達する。米国で「マツダ3」や「CX-5」を最大740ドル値上げしたが、上げ幅は約2%にとどまり、関税負担を吸収できていない。これ以上の値上げは、同社が掲げてきた「手の届くプレミアム」という位置づけを崩し、顧客がBMWやレクサスへ流れる可能性が高い。
米国内の生産拠点はトヨタとの合弁工場に限られ、マツダの割当は年15万台にとどまる。米国需要の半分にも届かない供給を、日本やメキシコからの輸入で補う体制は限界に近い。年20万台超の能力を持つメキシコ工場は2024年に83%の稼働率を記録したが、保護主義の広がりが効率的な拠点としての位置づけを揺るがしている。規模の小さいマツダに、このコスト増に対応する余力は乏しい。
中長期の「ライトアセット戦略」では、2030年までの電動化投資を当初の2兆円規模から、協業の活用で約1.5兆円へ抑えた。中国や欧州、東南アジアでは長安汽車集団との共同開発車を投入し、投資負担を軽減する。「EZ-6」はその象徴だが、基幹技術を中国側に依存する体制は、走行性能やブランドの維持に影響を及ぼす懸念がある。ソフトウェアや電動パワートレインでもトヨタグループとの連携を強めるが、技術面での主導権が弱まる可能性もある。
自社開発の「スカイアクティブ-Z」を使うハイブリッド車(HV)の投入は2027年を予定しており、足元の需要を十分に取り込めていない。環境規制が強まる中で、主力車種にHVを早期に用意できない判断は、収益性の高い顧客を競合に渡す結果につながる。市場の成熟を待つという説明は、準備の遅れを覆い隠すものに近く、将来の競争力に影響する。
国内販売は、フォード傘下だった2000年代半ばの年30万台規模から、2020年以降は20万台を下回る水準まで縮小した。成熟した国内市場での拡大は見込みにくく、北米への依存が経営の安定性を損なっている。北米の減速が、そのまま全体の収益に響く構造だ。かつて150万台規模だった生産体制が100万台を割り込めば、影響は大きい。
工場の稼働率が下がれば、1台あたりの製造コストは上昇し、固定費の負担が重くなる。状況によっては大規模な人員削減も現実味を帯びる。販売奨励金を増やして台数を維持すれば、中古車価格の下落を招き、ブランドの評価にも影響する。中国市場では存在感が薄れ、欧州では規制対応に追われるなか、北米以外での打開策は見えにくい。