「中国勢にディーゼルはない」ステランティス、EV敗戦から狙う“残存者利益”の勝算

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EV需要減速で4兆円減損、欧州で販売減に直面するステランティスが打った「ディーゼル復活」の一手。EV競争を避け、既存資産と中国勢不在の市場を活かして利益を確保する戦略の行方を探る。

ステランティスの巨額損失

プジョー・308(画像:ステランティスジャパン)
プジョー・308(画像:ステランティスジャパン)

 電気自動車(EV)需要の減速が世界規模で広がり、2025年に世界販売5位を記録したステランティスが厳しい経営局面に立たされている。2026年2月6日、同社は通期決算に先立ち、2025年下半期の戦略変更とそれにともなう費用の詳細を明かした。事業の抜本的な立て直しに向けて2025年下半期に約220億ユーロ(約4兆円)という巨額費用を計上した結果、2025年通期は純損失となる見通しだ。

 この4兆円にのぼる損失計上は、将来の不透明な要素を一度に処理して財務を身軽にする手法である。内訳を見ると、商品計画の変更に関連する費用が147億ユーロで、そのうちEV需要の減少予測に基づく現金支出が58億ユーロを占める。さらにEV用部品供給網の規模を適正にするための費用が21億ユーロ、事業運営の仕組みを変えるための費用が54億ユーロに達した。これらは、予測を上回る速さで進む市場の停滞に対し、投下した資本の価値を実態に合わせて整理した結果といえる。

 資産の効率化も急いでいる。カナダ・オンタリオ州のEVバッテリー合弁会社、ネクストスター・エナジーの株式49%をLGエナジーソリューションへ売却した。また、米国インディアナ州でのサムスンSDIとの合弁事業、スタープラス・エナジーからの撤退についても協議を進めている。固定資産を減らして現金の流動性を確保し、需要の変動に即座に対応できる体制を整える狙いがある。

 こうした混乱のなかでステランティスが打ち出したのは、かつての主力、ディーゼル車のラインアップを復活させる異例の方針だ。競合がEVシフトへ突き進むなか、内燃機関を再び強化して市場に残った利益を独占することが、同社の再生を支える重要な要素となる。この思い切った方向転換がもたらす影響を詳しく分析する。

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