自動車市場のポテンシャル――成長余地と人口優位【短期連載】インドは自動車産業にとって桃源郷となり得るのか(1)
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世界が注目するインドの人口ボーナス

今、世界中がインドに注目している。日本ではスズキのインド工場がよく話題に上るが、シュコダなどの欧州メーカーも業績を伸ばしている。BMWのIT拠点のように、IT人材の供給源としても期待され、欧州連合(EU)やロシアで不足する人材の確保先としての役割も大きい。こうしてインドの存在感は増している。しかし、人口世界一の国の内部事情はまだあまり知られていない。果たしてインドは自動車産業にとって本当に魅力ある市場なのか。本短期連載「インドは自動車産業にとって桃源郷となり得るのか」では、自動車産業を軸に現地の歴史や現状を整理し、市場規模や成長の余地を確認しながら、直面する課題や有効な戦略を示していく。
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第1回となる今回は、インドの現状を整理しながら、自動車産業のポテンシャルを探っていく。
2025年10月に国際通貨基金(IMF)が公表した世界経済見通しによると、インドはドル建て名目GDPで2026年に日本を抜き、世界第4位になる見込みだ。2030年にはドイツを上回り、世界第3位に浮上すると予想されている。
上位5か国の実質GDP成長率(物価変動の影響を除いた値、2026年1月IMF予測)を比較すると、米国は2025年に2.1%、2026年に2.4%、2027年に2.0%。中国は2025年5.0%、2026年4.5%、2027年4.0%。ドイツは2025年0.2%、2026年1.1%、2027年1.5%。日本は2025年1.1%、2026年0.7%、2027年0.6%となっている。インドは
・2025年:7.3%
・2026年:6.4%
・2027年:6.4%
となっている。上位5か国を見ても、インドの経済成長率が突出して高いことがわかる。今後もインドへの投資は活発になり、成長を続けるだろう。
インドの経済成長の背景には世界最大の人口がある。2023年、インドの人口は14億3807万人となり、中国の14億2258万人を抜いて世界一になった。ここで総務省統計局の「世界の統計2025」に基づき、日本、中国、インドの年齢構成の見通しを比較する。
日本は2020年に15歳未満が12.1%、65歳以上が28.7%で、2030年にはそれぞれ10.3%、30.8%、2040年には10.1%、34.8%と少子高齢化が進む。中国は2020年に15歳未満が18.0%、65歳以上が12.6%で、2030年には12.1%、18.3%、2040年には9.4%、26.6%となる。
一方、インドは2020年に15歳未満26.3%、65歳以上6.4%で、2030年には22.4%、8.6%、2040年には19.9%、11.2%と、若年層の比率が高く安定している。
日本の少子高齢化は明らかだが、中国も急速に少子高齢化が進むことがわかる。インドはここが大きく異なり、少子高齢化がわずかに進むものの、15歳未満と65歳以上の人口の合計が約30%と安定している。このため経済成長の基盤となる労働人口が多く、人口構成による成長のメリットが期待できる。
インドの人口構成による成長優位は30年以上続くと見込まれ、世界経済をけん引するポテンシャルは十分にある。