「中国勢にディーゼルはない」ステランティス、EV敗戦から狙う“残存者利益”の勝算

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EV需要減速で4兆円減損、欧州で販売減に直面するステランティスが打った「ディーゼル復活」の一手。EV競争を避け、既存資産と中国勢不在の市場を活かして利益を確保する戦略の行方を探る。

経営厳しさの現状

2025年下半期地域別販売台数(画像:ステランティス)
2025年下半期地域別販売台数(画像:ステランティス)

 ステランティスは4兆円もの減損処理により経営の厳しさに直面しているが、世界全体で見れば販売実績そのものは堅調だ。2025年下半期の世界販売台数は前年同期比11%増の282万台に達し、前の期を6%上回った。一方で欧州市場に限ると、販売台数は120万台で前の期を7%下回っている。

 この欧州での販売減速を食い止めるための具体的な対抗策として選ばれたのが、ディーゼル車の復活である。ロイターの報道によると、2025年末からプジョー308やDS4ハッチバックといった主要モデルにディーゼル仕様を再び投入した。

 かつて欧州では新車販売の少なくとも50%をディーゼル車が占めていたが、2015年の排出ガス不正問題や環境規制の強化、維持費の上昇によって需要は急減した。欧州自動車工業会(ACEA)のデータでは、2025年の新車登録のうちディーゼル車の割合は8.9%まで下落し、9.4%のプラグインハイブリッド車(PHV)に追い越される逆転現象が起きている。

 市場から退場しつつあるように見えるディーゼル車だが、長期的な視点では需要が持ち直す兆候も出ている。欧州でのEV販売が想定を下回るなか、規制当局が2035年までの内燃機関廃止を求めていた方針を緩め、販売継続期間が実質的に延びたからだ。

 最大の市場である米国でも、トランプ政権への交代によりEV導入の勢いが鈍化し、排出規制の撤廃が進むなど、内燃機関の需要が伸びる環境が整いつつある。他社がディーゼルから次々と撤退するなかで、ステランティスは生産設備を有効活用して市場に残った需要を独占する方向に舵を切った。減価償却が進んだ既存資産を活用できるこの判断は、収益を早期に回復させるための現実的な手段となる。

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