「中国勢にディーゼルはない」ステランティス、EV敗戦から狙う“残存者利益”の勝算
EV需要減速で4兆円減損、欧州で販売減に直面するステランティスが打った「ディーゼル復活」の一手。EV競争を避け、既存資産と中国勢不在の市場を活かして利益を確保する戦略の行方を探る。
中国不在市場の狙い

欧州市場でディーゼル車が衰退している事実は数字に表れている。オンライン市場のカーグルスによれば、英国でのディーゼル販売モデル数は2020年の167台から2025年には57台まで激減した。
ステランティスも例外ではなく、英国で販売するブランドのうち、ディーゼル車は2020年の26モデルから2025年にはわずか4モデルにまで絞り込んでいる。一見すると市場の潮流に逆らう動きだが、ここには明確な狙いがある。安値攻勢を強める中国メーカーが、ディーゼルエンジンの技術を持っていない点だ。
クリーンディーゼルの排出ガス処理に必要な触媒技術や高度な制御ノウハウは、長年の積み重ねが必要な分野である。EVに特化して急成長した中国勢にとって、今からこの分野へ参入する採算性は極めて低い。ステランティスは、電気、ガソリン、ディーゼルの全方式を同一のラインで混流生産できる基盤を整えている。これにより、EV専用ラインの稼働率に頼る中国勢に対し、減価償却が進んだ既存の設備を使い回すことで、圧倒的な低コストで車両を供給できる。
この強みは、オペル・コンボやプジョー・リフター、シトロエン・ベルリンゴといった小型商用車で特に発揮される。物流を支えるこれらの車両にとって、航続距離の長さと燃料価格の安さは欠かせない。
高級車ブランドのDSやアルファロメオでも、DS7やステルヴィオ、ジュリアといったモデルでディーゼルを継続する。長距離移動を好む層の需要に応えることで、機能性を優先する中国ブランドとの差別化を図る。競合が不在となった領域で確実に利益を積み上げる手法は、激化するEV競争を回避するための有効な防護壁となる。