「荷物はある、仕事もある。でも会社が潰れる」 運輸業を襲う“黒字倒産”の皮肉――なぜ需要が「重荷」に変わったのか

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黒字でも倒れる企業が増えている。正社員不足は52.3%、運輸は65.8%に達し、人手不足倒産は427件と過去最多だ。荷はあるのに動かせない。需給では説明できない歪みが、日本の物流を揺らしている。

黒字型倒産の不条理

トラック(画像:写真AC)
トラック(画像:写真AC)

 2026年の日本経済が直面しているのは、どこかちぐはぐな現象である。黒字でありながら、人手が足りずに倒れる企業が増えている。帝国データバンクによれば、2026年1月時点で正社員が不足している企業は52.3%。1月としては4年続けて5割を超えた(2026年2月20日発表)。人手不足を理由とする倒産は2025年に427件に達し、3年続けて過去最多を更新、初めて400件を上回った。景気が冷え込んで脱落したわけではない。供給の末端が動かなくなった。その帰結である――。

 なかでも運輸・倉庫業の数値は重い。正社員不足は

「65.8%」

と全産業のなかでも高い水準にあり、非正社員でも40.2%が足りない。現場に仕事がないのではない。むしろ逆だ。荷はある。だが、それを動かす人がいない。需要があっても、それを受け止める力が抜け落ちているのだ。

 ここで見えてくるのは、需給の振れでは説明しきれない事態である。人手が足りないから受注を絞る。受注が伸びないから売上は頭打ちになる。売上が伸びなければ賃上げに踏み切れない。賃金が上がらなければ人は集まらない。この循環が固定化している。

 他産業と比べると差はさらに際立つ。価格を転嫁しやすい分野は、賃上げを通じて人を引き戻す余地がある。一方、運輸は契約単価が長く据え置かれやすく、燃料費や人件費の上昇をそのまま上乗せしにくい。需要があっても単価が上がらない。売上の中身が変わらない限り、体力は回復しない。

 加えて、業務の性質上、代替がきかない。ドライバーがいなければトラックは動かない。自動化や省人化の話は進んでいるが、現時点で広く穴を埋める段階にはない。人が抜けた瞬間に稼働は落ちる。ここに硬直がある。

 賃上げをすればよい、という声もある。だが、原資がなければ実行できない。賃金を引き上げれば、利益はさらに削られる。利益が薄くなれば借入も難しくなる。資金繰りが詰まり、倒産が早まる。賃上げを行えば持たず、行わなければ人が去る。選択肢はどちらも厳しい。

 いま起きているのは、人が足りないという表面の問題ではない。需要があるにもかかわらず、供給側の体力が削られ続けている。そのままでは連鎖は止まらない。これは需給の揺れではなく、長く積み重なった歪みが表に出たものだ。黒字型倒産の増加は、その兆しにすぎないのだ。

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