「荷物はある、仕事もある。でも会社が潰れる」 運輸業を襲う“黒字倒産”の皮肉――なぜ需要が「重荷」に変わったのか

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黒字でも倒れる企業が増えている。正社員不足は52.3%、運輸は65.8%に達し、人手不足倒産は427件と過去最多だ。荷はあるのに動かせない。需給では説明できない歪みが、日本の物流を揺らしている。

賃上げ難が加速させる倒産

調査結果(画像:帝国データバンク)
調査結果(画像:帝国データバンク)

 2025年に発生した427件の人手不足倒産は、労働集約型の産業が抱える限界をはっきりと映す。年間で初めて400件を超え、3年続けて過去最多を更新した。賃上げの流れのなかで、人をつなぎとめるために人件費は増える。しかし、その増分を運賃やサービス価格へ十分に転嫁できない。収益は圧迫され、体力は削られていく。

 利益が薄くなれば、将来に向けた自動化や省人化への投資は先送りになる。生産性を高める手立てを持てないまま、人件費の重みだけが残る。経営の身動きは取りづらくなり、行き場は狭まる。需要はある。それでも応じるほど費用がかさみ、利益を食い潰す。持続的な運営が崩れる局面に入っている。低い運賃に支えられてきた構図のひずみが、いまは企業の倒産という形で表に出ている。

 運輸・倉庫業が直面しているのは、需要が消えたことによる衰えではない。東京都の一般貨物自動車運送業者は「人手があれば仕事量は十分にあり、増収を目指せる環境を感じている」と語る。本来であれば、成長の余地はあるということだ。需要が受注を押し上げ、収益が増え、労働条件が整い、人を呼び込む。回るはずの流れの材料はそろっている。

 それでも動き出さない。上向きの流れを始める足場が足りない。目の前に拡大の機会があっても、担い手がいなければ受け止められない。取りこぼした受注は、そのまま機会損失になる。需要という追い風が、いまは重荷に変わる。応じきれない仕事が現場を圧迫し、企業の持続を揺さぶる。

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