「荷物はある、仕事もある。でも会社が潰れる」 運輸業を襲う“黒字倒産”の皮肉――なぜ需要が「重荷」に変わったのか

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黒字でも倒れる企業が増えている。正社員不足は52.3%、運輸は65.8%に達し、人手不足倒産は427件と過去最多だ。荷はあるのに動かせない。需給では説明できない歪みが、日本の物流を揺らしている。

増収できない構造

調査結果(画像:帝国データバンク)
調査結果(画像:帝国データバンク)

 運輸・倉庫業で起きているのは、状況が次の悪化を呼ぶ連なりである。前述のとおり、起点は65.8%という正社員不足の高さだ。2024年1月は65.3%、2025年は66.4%、そして今回が65.8%。推移を追っても、6割を下回らない状態が続く。担い手がここまで欠ければ、受注を絞らざるを得ない。東京都の一般貨物自動車運送業者が

「人手不足により売り上げを伸ばせていないが、人手があれば仕事量は十分にあり、増収を目指せる環境を感じている」

と語るように、需要はある。それでも、自社の稼働の枠を超える分は断るしかない。日々を回すための判断である。

 受注の抑制は、目先では現場を守る手立てに映る。だが時間がたつほど、立場は弱くなる。断る回数が増えるほど、荷主の供給網のなかでの重みは下がる。やがて運賃交渉の主導権も遠のく。売上が伸びなければ、人件費に回す余裕も出ない。賃金を上げられなければ採用で見劣りし、人は集まらない。残った社員の負担だけが重くなる。

 黒字を保っていても、意思で規模を広げられない。固定費の重さと賃上げの圧力が積み重なれば、体力は削られる。仕事があふれていても、支えきれなくなる局面は来る。需要があるのに供給力を伸ばせない。いま業界を覆う行き詰まりは、そこにあるのだ。

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