「荷物はある、仕事もある。でも会社が潰れる」 運輸業を襲う“黒字倒産”の皮肉――なぜ需要が「重荷」に変わったのか
業界間の構造差

全体の非正社員の不足率は28.8%まで下がり、全体では持ち直しの動きが見える。飲食業は2024年の72.2%から2025年に60.7%、2026年には58.6%へと低下した。旅館・ホテルも2024年59.6%、2025年50.0%、2026年44.0%と、3年続けて改善している。背景には、デジタル技術の導入やスポットワークの広がりがある。業務を細かく分け、短時間から入れる形を整えたことが、人の流れを呼び戻した。
一方で、運輸・倉庫業の非正社員不足率は2024年の41.4%から2026年の40.2%へと、動きは1.2ポイントにとどまる。他分野が効率化で心理的な負担を和らげ、人を引き寄せているのに対し、この現場は物理的な条件に縛られている。移動や荷役といった身体を使う作業、運転免許や専門技能の要件が参入の壁になる。結果として、人を集める競争で差が広がる。気軽に参加できる働き方が増えるほど、強い責任と長い拘束をともなう仕事は見劣りする。相対的な魅力が下がり、人の供給は細る。
前述のとおり、運輸・倉庫業の非正社員不足率は40.2%に達する。他分野のような持ち直しは見えにくい。背景にあるのは、正社員の欠けが非正社員での穴埋めさえ難しくする硬直だ。ここまでひっ迫すると、現場の熟練者は日々の運行や荷役を回すだけで手一杯になる。新人や非正社員を育て、戦力へ引き上げる時間も気力も削られていく。その余裕の消失が、補助的な役割から一段上へ進む道をふさぐ。
代わりの手立てがないまま負担が積み上がれば、既存の社員は離職を選ぶ。状況は一段と厳しくなる。人手を補うための教育が滞り、現場に残る人が次の担い手を育てる力を失っていく。未来に回すはずの力を、いまをしのぐために使い切っている形だ。負荷が内側にたまり、逃がしどころを失う。この姿は、人手不足の域を越え、組織の働きそのものが弱っていることを示すのだ。