「目立つのもしんどい」 シーマ現象から40年! 誰もが選ぶ大衆車が“正解”になった根本理由――なぜ個の突出は“重荷”になったのか

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バブル期の大衆車が「無難」とされていた評価は逆転した。所得停滞と車両価格上昇でリスク回避志向が強まる中、2025年の上位10車種が全体の2割を占める市場集中は、安心と信頼を示す合理的選択としての大衆車人気を浮き彫りにする。

旧車ブームの示唆

ホンダ・初代シビック(画像:本田技研工業)
ホンダ・初代シビック(画像:本田技研工業)

 近年、旧車ブームが高まっており、メーカー側も旧車用パーツを揃える復元事業を拡大している。日産モータースポーツ&カスタマイズの真田裕代表取締役CEOによると、この市場規模は2032年に全世界で79.5億ドル(約1.2兆円)、日本でも2億ドル(約306億円)に達する見通しだ。

 かつて凡庸と見なされていたモデルが、年月を経て構造の完成度や耐久性など実質的な価値で評価されるようになった事実は見逃せない。代表例であるホンダ・シビックは、独自の燃焼方式であるCVCC技術を搭載した1.5リッター直列4気筒SOHCエンジンを世に送り出した。この技術は1973(昭和48)年に、当時最も厳しいとされていた米国マスキー法を世界で初めてクリアし、社会に大きな注目を集めた。

 初代シビックのコンパクトな外観や走行性能は高い水準にあったが、バブル期に発売された4代目や5代目に至るまで、その評価は大衆車の域を出るものではなかった。

 この評価の変遷は、車両の質が当時の流行や競争環境による相対的な評価に覆い隠されていたことを示す。かつての大ヒット曲が時代の文脈から切り離された瞬間に純粋な名曲として再評価されるのと同じように、車両も過剰な記号消費の熱狂が去ったことで、機能的な美しさが際立つようになった。

 多くの人に支持されたという事実は、今の視点では、それだけ過酷な使用環境に耐えられる信頼性があったことの証拠となる。「格好悪い」という評価が効力を失い、優れた製品としての実力が正当に認められるようになった今、大衆性は蔑称ではなく、時代を超えて多くの人が享受できる質の高い共有体験としての価値を持つようになった。

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