「目立つのもしんどい」 シーマ現象から40年! 誰もが選ぶ大衆車が“正解”になった根本理由――なぜ個の突出は“重荷”になったのか

キーワード :
,
バブル期の大衆車が「無難」とされていた評価は逆転した。所得停滞と車両価格上昇でリスク回避志向が強まる中、2025年の上位10車種が全体の2割を占める市場集中は、安心と信頼を示す合理的選択としての大衆車人気を浮き彫りにする。

行動経済学で見る選択

トヨタ・カローラ(画像:トヨタ自動車)
トヨタ・カローラ(画像:トヨタ自動車)

 今のように情報が過剰にあふれる環境では、あらゆる候補を比較すること自体が大きな認知負荷となる。ネット上にはSNS投稿や動画を含む試乗レビュー、価格比較サイトなどがあふれ、入手できる情報量は非常に増えている。

 すべてを自分で精査して最良の一台を選ぶことは容易ではなく、こうした状況では多くの人が選んでいる事実に依拠するバンドワゴン効果が、合理的な判断の近道として働く。

 さらに、個人の趣味が細分化された今特有の心理も影響している。嗜好が閉じられた空間で増幅される時代だからこそ、圧倒的なシェアを持つ大衆車には、かつてない価値が生まれる。多くの支持を集めるモデルを選ぶことは、他者との共通体験や共通言語を確保する行動となる。かつては主流すぎることが格好悪いとされていた存在が、今では分断された個をつなぐ共有可能な安心をもたらす対象に変わった。

 また、車両を手放す際のリセールバリューを一定水準で保ちたい心理や、特異なモデルを選ぶことで生じる維持費の不確実性を避けたいという損失回避の傾向も強まっている。こうした状況で、大衆車という多数派に属することは心理的な保険として機能する。

 他者より目立つことを重視した1990年代の差異化志向に比べ、今では周囲に合理的な理由を説明しやすく、確実に満足できる選択が優先される。この評価の変化は、過剰な情報に対する自己防衛と、失敗のリスクを避ける今の生存本能が重なった結果である。

全てのコメントを見る