「目立つのもしんどい」 シーマ現象から40年! 誰もが選ぶ大衆車が“正解”になった根本理由――なぜ個の突出は“重荷”になったのか

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バブル期の大衆車が「無難」とされていた評価は逆転した。所得停滞と車両価格上昇でリスク回避志向が強まる中、2025年の上位10車種が全体の2割を占める市場集中は、安心と信頼を示す合理的選択としての大衆車人気を浮き彫りにする。

集中と残価

2025年通年「乗用車ブランド通称名別上位20位」(画像:日本自動車販売協会連合会)
2025年通年「乗用車ブランド通称名別上位20位」(画像:日本自動車販売協会連合会)

 近年の新車市場では、販売上位の車種に需要が集中する傾向が強まり、「売れている車」とそれ以外の格差が広がっている。日本自動車販売協会連合会が発表した2025年通年の「乗用車ブランド通称名別順位」では、上位10車種が全体のおよそ2割、上位20車種が4割近くを占めている。

 2025年末時点では、ホンダ・N-BOXが暦年の新車販売台数で4年連続首位となり、軽四輪車の新車販売でも11年連続でトップを獲得した。消費者は明確に売れている車を選んでおり、市場では「正解への収れん」が起きている。

 こうした販売の集中は、個人の嗜好が多様化した今、大衆車が数少ない共有可能な共通言語の役割を果たし始めたことを示している。かつては大勢と同じものを選ぶことが主体性の欠如と見なされることがあった。しかし今では、メガヒットへの合流は不確実な情報があふれる状況で品質への信頼を示す行為となっている。

 誰もが認める存在に価値を見出すことは、分断された社会をつなぐ合意形成の側面を持つ。人気車に需要が集中することは残価に直結し、人気車種と不人気車種では残価に明確な差が生まれ、購入時の判断に大きく影響する。

 さらに、残価設定型ローンの普及によって、将来の価値が読みやすい車種に需要が集中する現象も加速している。ユーザーは車を移動手段としてだけでなく、換金性の高い資産として運用する意識を強めている。市場の仕組み自体が多数派を有利にする形となり、人気車の勢いがさらに増幅される循環が生まれている。

 将来の売却価格が保証される安心感は、今における強力な付加価値であり、大衆車が「失敗のない選択」としての地位を固める根拠になっている。

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