「ベンツよりBYD優先?」 公金5500億円が“中国EV”を後押し――ドイツ政府が自国メーカーを置き去りにした「禁断の一手」
ドイツ政府は30億ユーロ規模の新EV助成で、低・中所得層を中心に約80万台の購入を支援する。中国製EVとの競争が激化する中、国内メーカーの生存と市場拡大の行方が欧州全体の政策にも影響を与える重要局面となる。
ID.Poloに見る低価格帯EVの苦境

フォルクスワーゲンは、車両価格を2.5万ユーロ(約460万円)以下に抑えたBセグメントのハッチバック型EV「ID.Polo」を2026年秋に投入する予定である。このモデルには、最大6000ユーロ(約110万円)の助成が適用される見込みで、低価格帯EVにおける採算を確保する上で欧州メーカーにとって重要な分岐点となる。
従来、ドイツ車はブランド力によって一定の価格支配力を保持してきたが、中国メーカーとの激しいシェア争いにより、その優位性はすでに薄れている。ID.Poloの価格戦略は、公的資金による補填なしには成立しないほど、収益構造が脆弱な状況に置かれている。この車は、量産EV市場におけるドイツの基幹産業の生き残りを見極める最前線のモデルでもある。
加えて、新制度でREEVが助成対象に含まれたことは、これまでの純粋なバッテリー式電気自動車(BEV)推進路線が現実的に修正されたことを示す。地方部での充電インフラの遅れを政府が認め、航続距離に不安を抱く保守的な消費者をつなぎ止めるための措置である。
同時に、BEVへの急速な移行で打撃を受ける内燃機関関連の中小部品サプライヤーに、小排気量エンジンの生産を継続させることで緩やかな延命策を講じる産業保護の側面も持つ。ドイツメーカーは、長年培ってきた広範なサービス網という物理的な優位を持つが、圧倒的なコスト競争力を誇る中国勢に対し、国家の財政支援を頼りにどこまで市場シェアを守れるかという、非常に過酷な挑戦に直面しているのだ。