「ベンツよりBYD優先?」 公金5500億円が“中国EV”を後押し――ドイツ政府が自国メーカーを置き去りにした「禁断の一手」

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ドイツ政府は30億ユーロ規模の新EV助成で、低・中所得層を中心に約80万台の購入を支援する。中国製EVとの競争が激化する中、国内メーカーの生存と市場拡大の行方が欧州全体の政策にも影響を与える重要局面となる。

欧州EV政策の試験場となるドイツ

ドイツの EV 補助金 戦略 概要。
ドイツの EV 補助金 戦略 概要。

 ドイツ政府が打ち出した新助成制度は、英国やフランスの中国製EV排除路線と、ドイツの品質競争重視という方針のどちらが産業の延命や普及に有効かを見極める試験台になっている。ここで得られる結果は、EU全域のEV政策に大きな影響を及ぼす判断材料となるだろう。

 現状、ドイツ国内の中国車シェアは一桁にとどまるが、これが二桁に達した場合、メルツ政権がどの程度介入を強めるかが注目点となる。その際、政府が取り得る対応は、助成要件の変更か、中国勢のコスト優位を削ぐ新たな環境基準の策定にほぼ限られていく。

 折しもEU内では、2035年以降の内燃機関車新車販売禁止措置を見直す議論が再び浮上している。この状況下で、ドイツの新助成制度がEV需要を自律的に成長させる契機になるのか、あるいは国内産業の衰退を早める要因になるのかは、予断を許さない。大規模な財政投入を行っても自国メーカーがシェアを回復できなければ、政府は2035年規制の撤回を正当化する「市場の失敗」という根拠を手にすることになる。

 ドイツは今、自国基幹産業の保護とグローバル競争の原理の間で、きわめて危うい境界線上に立っている。今後の市場の動向は、一国の産業政策を超え、欧州全体の脱炭素化の進行に直結する問題となるだろう。

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