「ベンツよりBYD優先?」 公金5500億円が“中国EV”を後押し――ドイツ政府が自国メーカーを置き去りにした「禁断の一手」
ドイツ政府は30億ユーロ規模の新EV助成で、低・中所得層を中心に約80万台の購入を支援する。中国製EVとの競争が激化する中、国内メーカーの生存と市場拡大の行方が欧州全体の政策にも影響を与える重要局面となる。
中国メーカーを排除しない異例の方針

フォルクスワーゲンやBMWをはじめとするドイツの主要メーカーのEV販売は、深刻な低迷に直面している。その状況を受け、政府は新たな購入助成制度を導入し、停滞する需要を無理やりでも掘り起こそうとしている。国内市場を救済する直接的な手段であると同時に、中国製EVを排除しないという点で、他の欧州諸国とは明確に異なる姿勢を示すものでもある。
英国は2025年に開始した補助金制度で、中国メーカーを実質的に排除する仕組みを取り入れた。フランスも低・中所得層向けのEVリース制度により、環境スコアを通じて同様の障壁を設けている。これに対し、ドイツが市場をオープンに保つ背景には、自国メーカーにとって最大の収益源となる中国市場からの報復関税を避け、産業の基盤を守るという現実的な判断がある。
シュナイダー環境相は1月19日の記者会見で、ドイツブランドの品質に揺るぎない自信を示すとともに、中国メーカーの流入が脅威であるという主張には根拠がないと述べた。制限を設けず競争を促すこの姿勢は、表面上は自由貿易の原則に沿っているように映る。しかし実際には、助成金が中国メーカーに流れる可能性を受け入れつつ、EV市場全体を拡大させることを優先した、政府による
「計算された賭け」
だろう。中国メーカーを市場から排除すれば、短期的にはドイツメーカーのシェアを守ることはできるだろう。しかし、選択肢が減ればEV価格は高止まりし、普及は再び停滞する。そうなれば助成金の効果は薄れ、財政負担だけが残る。政府は自国メーカーの競争力にある程度の楽観を置きながらも、中国車を市場拡大の促進力として活用し、活性化した市場を自国産業の生存につなげるという、現実的で冷徹な判断を下したのである。