中国EV「制御不能」――知財ライセンスで欧米メーカーを“下請け化”、日本は開発主権・ブランド価値をどう守るべきか?
世界のEV市場で中国勢が占める割合は6割を超え、車載バッテリーではCATLが約4割を握る。技術と規格を外部に供給するライセンス型戦略により、欧米メーカーは自社開発の主導権を失いつつあり、供給網や産業秩序が静かに書き換えられている現実を読み解く。
中国発サプライチェーンが描く産業地図

中国勢は、低価格を前面に押し出した市場参入の段階を越え、技術やライセンスを供給する立場へと軸足を移しつつある。
CATLがフォードやGMと結んだLRS契約は、その変化を分かりやすく示す例だ。巨額投資をともなう海外生産に踏み出すより、知的財産や運営の知見を差し出すことで、収益の確実性を高める。その選択が、いまの中国企業の振る舞いを特徴づけている。
EV向けのE/Eアーキテクチャや車両基盤の採用は各地で進み、東南アジアでも存在感を強めている。結果として供給網の組み替えが静かに始まり、技術や規格への依存を常態化させるかたちで、中国発の産業秩序が輪郭を帯びてきた。関税や規制といった物理的な壁では届かない、知財と標準の浸透による支配がそこにある。
日本の自動車産業は、この流れを前に何を鍛えるべきなのか――。2026年1月6日の自動車5団体賀詞交歓会で、日本自動車工業会の佐藤恒治新会長(トヨタ自動車社長)は、業界が足並みをそろえて国際競争力を高める必要性に触れた。ただその中身は従来と同じではない。
優れた車両をつくる力だけでは足りず、中国が主導する枠組みの内部で、代替されにくい価値と自立性をどこまで保てるかが問われている。産業政策も企業戦略も、厳しい環境を生き抜く力を前提に、考え直す局面に入ったのだ。