中国EV「制御不能」――知財ライセンスで欧米メーカーを“下請け化”、日本は開発主権・ブランド価値をどう守るべきか?

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世界のEV市場で中国勢が占める割合は6割を超え、車載バッテリーではCATLが約4割を握る。技術と規格を外部に供給するライセンス型戦略により、欧米メーカーは自社開発の主導権を失いつつあり、供給網や産業秩序が静かに書き換えられている現実を読み解く。

CATLが切り拓く知財ビジネスの新潮流

CATLのグローバル拠点(画像:CATL)
CATLのグローバル拠点(画像:CATL)

 車載バッテリーの世界シェアでは、中国企業がおよそ7割を占めている。なかでも寧徳時代新能源科技(CATL)は、トップシェアで4割近くを占めている。この分野で圧倒的な優位性を持つCATLは、中国の新興EVメーカーNIOや東風日産などを始めとして、フォルクスワーゲン(VW)やステランティスなどとも提携し、車載バッテリー事業を拡大している。

 さらに米国でフォードやゼネラルモーターズ(GM)が建設中のバッテリー工場は、CATLが独自技術や運営ノウハウを供与する「LRS(License, Royalty and Service)契約」に基づいている。同契約によって、CATLは生産工場などの資産を持たずに、自らが所有する知的財産権をライセンス料として販売し、実利を吸い上げる体制を構築している。

 これは欧米メーカーが巨額の設備投資リスクを背負う一方で、中国側が研究開発の果実を確実に回収する非対称な収益構造を意味する。

 フォードはEV用バッテリー事業強化のため、2023年にCATLとリン酸鉄リチウム(LFP)電池技術のライセンス契約を結んだ。フォードは2025年12月にEV計画の縮小を発表したが、同時にエネルギー貯蔵用バッテリーという新たな事業を打ち出した。この戦略転換を可能にしたのはCATLによる独自技術へのアクセスであり、新たな計画ではライセンス契約を活用した定置型エネルギー貯蔵用の大型バッテリーを生産する。

 さらにフォードは、中国のEV最大手、比亜迪(BYD)からプラグインハイブリッド車(PHV)用バッテリーを調達する見通しであると報じられている。こうした動きは、欧米メーカーが将来の技術革新の源泉である材料科学の知見を自ら放棄し、中国の知財エコシステムへの依存を深めている現実を浮き彫りにしている。

 中国のバッテリーサプライヤーが市場を下支えする構図が固定化し、世界シェアの大半を握るメリットを最大限に活用した守りの知財戦略へシフトしている。CATLに限らず、BYDやCALB、Gotionといった中国サプライヤーも同様に、LRS契約による知財戦略にシフトしていくことが想定される。

 ライセンス供給先となる自動車メーカー各社は、自社開発によるコスト負担を回避できるが、その代償として車載バッテリーの主導権を中国勢に明け渡し、開発の主体性を喪失するリスクを抱えている。

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