「日本人を優先すべき」「安い労働力が欲しいだけ」――そんな綺麗事が「路線バス」を壊す? 赤字73%&欠員2万人の現実が迫る、インフラ維持の最終選択
全国で初めて外国人が路線バス運転席に立った。東京・沖縄で5人がデビューする一方、路線廃止は10年で約1万5900km、事業者の73%が赤字。人手不足の臨界点で、日本の公共交通は雇用と負担の再設計を迫られている。
移動の自由を維持するための社会契約

今回の外国人ドライバーの起用は、日本の交通インフラが長年抱えてきた矛盾が臨界点に達したことを示す象徴的な出来事だ。これまで我々は、現場の過度な負担や不透明な内部補助によって、低価格かつ高品質なサービスを当然のように享受してきた。しかし、国内の生産年齢人口が急激に減少する中で、これまでのモデルを維持することはもはや物理的に不可能である。
運転席に座る人の属性が変わることは、人手不足の解消という側面を超えて、公共交通というサービスをどう定義し、その存続のために何を差し出すのかを我々に問い直している。安全性や品質に対する過剰な期待を捨てきれず、一方で負担や変化を拒み続けるのであれば、待ち受けているのはインフラの完全な消滅だ。
移動の手段を失うことは、地域社会の活力を奪い、孤立を生み出すという目に見えにくい巨大な損失に直結する。今回デビューしたドライバーたちは、そうした事態を回避するために投入された実効性のある手段にほかならない。
これからも移動の自由を享受し続けるためには、提供側と利用側が互いの現実を直視し、歩み寄る必要がある。異文化を受け入れる際の摩擦や不便さを、インフラを維持するための必要経費として社会全体で共有できるか。今、我々は移動に関わる産業構造の持続可能性をかけた、重大な選択の場に立っている。