「日本に技術を取り戻したい」 日産CEOの熱きレガシー宣言! AIで加速する開発力、中東を「宝石」と呼ぶグローバル戦略とは【リレー連載】頑張っちゃえ NISSAN(9)
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問われる日産の覚悟──技術と使命の交差点で

エスピノーサ氏の発言からは、業績報告という枠を超えた射程の長さが見えてくる。急激に変化する自動車産業で日産がどう生き残るか、そしてグローバル企業としての役割をどう捉え直すか──その輪郭が浮かび上がる。
日産が英国のAIスタートアップWayve社と手を組み、次世代プロパイロットの開発を進めている背景を考えてみたい。AIは自動運転技術の土台になるだけではない。車両開発のプロセスそのものを効率化し、開発期間を短縮する。つまりAIは、企業文化や開発スピードを根本から変える触媒として機能している。EV時代の技術進化は驚くほど速い。AIを使いこなして素早く対応できるかどうかが、日産がモビリティ・テック企業として競争力を保てるかの分かれ目になる。
経営の立て直し計画とサプライチェーン強化は、危機に強い体制を作ろうとする意志の表れだ。世界各地に拠点を持ちながらも、膨らみすぎた生産能力を適正化し、「柔軟性」を確保する。これは地政学リスクや原材料不足といった外部の不確実性に対する高度なリスクマネジメントに他ならない。固定費や変動費の見直し、新モデルの投入と組み合わせることで、将来の市場変化や政策変化にも対応できる強靭な体制を築いている。
ブランド戦略では、AI・自動運転・EV・ソフトウェア技術に加えて、長年培ってきた歴史や世界中の顧客基盤といった無形資産が競争優位を支える。これがあるからこそ、新規参入ブランドには簡単に真似できない「信頼と安心」を提供できる。さらに自動運転やLIV(Life On Board)技術の開発は、安全性や快適性、移動効率といった消費者にとっての価値を直接生み出すことにもつながっている。
社長が個人のレガシーとして「日本の技術的頂点への貢献」を掲げた点は興味深い。これは国内産業全体への影響力を意識した発言だろう。日産の技術革新は、日本のAI・ソフトウェア・バッテリー関連産業の活性化にも波及する。国内の政策や規制──脱炭素、交通安全、自動運転のルール──との連携も戦略に組み込み、技術革新と社会的使命を一体化させている。
さらに注目すべきは、中東や中国市場での展開と日本国内の技術基盤強化を統合し、グローバル戦略と国家への貢献を両立させようとしている点だ。短期的な財務の立て直しと柔軟な生産体制の維持、中長期的なAI・自動運転技術の進化、ブランド価値の向上、消費者価値の創出──これらを同時に追いかける戦略である。
まとめると、日産はAI・EV・自動運転を軸にした技術の強み、歴史と顧客基盤という無形資産、柔軟なサプライチェーンを組み合わせている。自動車産業の競争環境に対応しながら、日本国内の産業競争力を高めるという社会的使命も追いかけている。技術革新、ブランド価値、サプライチェーン、国家への貢献がひとつになった統合型の戦略──これこそが日産の企業価値を支える核心だ。ただし、その実現には言葉以上の覚悟と実行力が問われている。