東京周辺のバス運転手、ぶっちゃけ「最適な年収」はいくらなのか?――500万円? 公共交通の給与改革を考える

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東京圏で深刻化するバスドライバー不足は、平均年収420万~460万円にとどまる待遇構造が背景にある。離職は中堅層に集中し、物流業界への流出も進む。最低500万、中央値750万、最高1000万円という報酬水準の再設計が、公共交通の持続性を左右しつつある。

東京圏ドライバーの年収はいくらが最適か?

路線バス(画像:写真AC)
路線バス(画像:写真AC)

 今回、路線バスの専門家である筆者(西山敏樹、都市工学者)は、

・応募者確保
・離職率低下
・安全運転
・企業コスト

のバランスをどの水準で実現できるかを考えた。無理だという声もあるだろう。しかし現場の声に基づき、年収ラインをあえて示すことで、あるべき水準に近づく手法もあると考える。

 最低ラインとして設定したのは「年収500万円」である。日本の平均年収461万円に39万円上乗せした水準だ。月額換算では約3万円強増える計算になる。重労働や大型二種免許の価値を正当に評価する観点からも、現場のドライバーにとって必要な水準である。

 年収500万円あれば、独身者は貯蓄をしながら生活に余裕を持てる。夫婦ふたり世帯でもある程度ゆとりのある生活が可能だ。子どもがひとり生まれると養育費の負担が加わり、節約も必要になる。病気や急な出費もあり、貯金が思うように増えない場合もある。しかし共働きであれば、生活の余裕や貯蓄もある程度確保できる。現場のドライバーからも、「最低500万円は維持してほしい」という声が根強い。入社年次が若くても、この水準があれば人生設計が立てやすいという。

 最適ラインとして想定するのは、「年収750万円」である。入社10~15年程度の勤務で得られる水準を目安とした。35~40歳台前半で配偶者と子どもふたりを養うには、この水準が理想的である。

 額面の75~85%程度が手取りとなるため、手取りは約560万~640万円程度になる。日本の平均年収461万円と比べると高めの水準だ。35~40歳前後になると独身者は減り、結婚や子どもを持つ層が増える。夫婦ふたりであれば十分に快適な生活が可能で、外食やレジャーも楽しめる。子どもふたりの世帯では、住居費や教育費の負担から節約も必要になる。しかし配偶者の所得があれば、子どもふたりでも生活に余裕が生まれる水準だ。

 路線バス業界では、35~40歳台前半の離職が多く、就職希望者も減少する傾向がある。そのため、少し高めの給与水準で中堅層の定着を図る方法が必要だ。バス会社によっては平均年齢が50歳を超える場合もあり、スキル伝承を考える上でも、750万円を下回らない年収水準で離職リスクを抑えることが求められる。

 最高ラインとして想定するのは「年収1000万円」である。60歳引退時に達成したい水準だ。かつてドライバーの最高峰年収1000万円は、業界の憧れであった。

 特に生え抜きのベテランドライバーを高く評価する仕組みを可視化しなければ、若手や中堅は希望を持てず定着しない。離職した元中堅ドライバー数人に聞くと、現状ではどんなに頑張っても800万円台で終わってしまうと嘆いていた。

 60歳前後で子どもが大学を卒業する世帯になると、老後も意識するようになる。その際、希望が持てる水準が1000万円である。憧れの年収を最後に得られれば、入職希望者も増えるだろう。

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