「水素30円の壁」を突破できるか? JERA×デンソーが挑む排熱活用SOECと地産地消モデルの戦略

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政府目標の水素供給30円/Nm3と現状100円台の価格差。その壁を破るべく、デンソーとJERAが排熱活用型SOECで挑む。燃料コスト低減がFCV普及と地域物流経済を左右する。

既存電解方式の構造的弱点

水素、HV車、ガソリン車のコスト比較(画像:中嶋雄司)
水素、HV車、ガソリン車のコスト比較(画像:中嶋雄司)

 水素ビジネスに携わる技術者が口を揃えて言うのは、電気代の高さが最大のボトルネックだということだ。水を電気分解して水素を作る工程では、総コストの6~7割を電気代が占める。装置がどれほど安くなっても、投入する電力が高ければ最終的な水素価格は下がらない。

 従来型のアルカリ型やPEM型水電解装置は、常温付近で安定稼働できる点が長所だ。しかし電力だけで水を分解する構造ゆえ、電力価格の変動が製造コストにそのまま響く。結果、現状の100円台という価格は政府目標の30円とあまりにもかけ離れており、商用化やインフラ投資の進展を妨げてきた。

 補助金で価格差を埋めるやり方は持続性に欠ける。特に地方の交通事業者や物流業者にとって、燃料費の変動は収支に直撃する。環境価値を唱えるだけでは高価格を正当化できない段階に入っており、ガソリンや軽油とのコスト競争に勝てる水素供給の実現が急務となっている。

 こうした背景から、水素製造における消費電力の削減は、価格引き下げの最大の突破口として注目されている。効率化とコスト低減を両立させられる技術の登場が、燃料電池車(FCV)や水素エンジンの普及を左右する。

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