「水素30円の壁」を突破できるか? JERA×デンソーが挑む排熱活用SOECと地産地消モデルの戦略
政府目標の水素供給30円/Nm3と現状100円台の価格差。その壁を破るべく、デンソーとJERAが排熱活用型SOECで挑む。燃料コスト低減がFCV普及と地域物流経済を左右する。
内燃機関サプライチェーンの延命戦略

SOECの可能性は、水素製造にとどまらない。この技術には、水蒸気と二酸化炭素を同時に電気分解する「共電解」という機能がある。このプロセスにより、水素を精製しつつ大気中のCO2を活用して合成ガス(CO+H2)を生成できる。合成燃料の原料としても使えるため、既存の内燃機関技術を維持しながら脱炭素化を進める手段となる。
この点は日本の自動車産業にとって戦略的意義が大きい。電気自動車(EV)一辺倒ではなく、エンジン技術という長年の蓄積を活かしつつ、水素や合成燃料を取り入れる選択肢を残すことで、産業の経済的安全保障を強化できる。従来のエンジンサプライチェーンを延命させつつ、新たな燃料市場での競争力を確保する可能性があるのだ。
さらに、輸送・貯蔵の課題もSOECが軽減する。小型で高効率な装置は、工場や水素ステーションでのオンサイト製造に適している。その場で作り、その場で使うことで運搬コストを削減できる。地方の物流拠点や中小事業者にとっても、初期投資や運用リスクを抑えた水素活用が可能となる点は重要で、交通・物流網全体への波及効果が期待される。
こうした地産地消型の水素供給モデルは、コスト削減策にとどまらず、自動車産業とエネルギーインフラの連携を進める起点となる。日本が培ってきたエンジン技術を未来の脱炭素社会に組み込む戦略として、SOECの活用は経済的にも産業的にも価値の高い選択肢である。