名神高速60年「老朽化をチャンスに変える時」――累計32兆円の経済効果を次世代に再創造できるか?
時間価値を変えた交通革命

名神の開通により、名古屋~関西間の移動時間は従来の5~6時間から約2時間に短縮された。この大幅な時間短縮は、経済・物流・社会のさまざまな領域に影響を与えた。主に三つの効果が顕著である。
まず、製造業の広域分業を支える物流への貢献である。名神沿線には数多くの物流拠点が整備され、2015(平成27)年の名神による経済波及効果は約7308億円と試算される。そのうち約4割は道路輸送、すなわち物流業が中心だ。愛知、岐阜、滋賀、京都、大阪、兵庫の6府県にある工業団地の約半数が名神沿道に集中している。1963(昭和38)年の製造品出荷額は3.8兆円だったが、2021年には108兆円と約29倍に増加し、沿道6府県だけで全国の約3割を占めるまでに成長した。貨物車の地方別移動割合を見ると、東海~近畿間の物流が全体の約4割を占める。
次に、時間価値の向上である。名神は日本初の高速道路であり、高速バス路線もここから始まった。1965年には大阪~関東・北陸・東北方面への便は存在しなかったが、2023年には大阪~関東間で年間約193万人、大阪~北陸約11万人、大阪~東北約2万人が利用するまでに拡大した。救急医療の利便性も向上している。たとえば清生会滋賀県病院は栗東ICから車で約3分の距離にあり、名神の開通によって緊急搬送の迅速化が進んだ。また、名神沿道は観光面でも恩恵をもたらしている。国宝・彦根城のある滋賀県彦根市では、彦根ICから城や市内観光地まで10~15分でアクセス可能で、来訪者の利便性が高い。
最後に、安全保障的な役割である。名神は災害時の代替ルートとして機能してきた。2021年8月の豪雨では、並走する国道1号線の滋賀~京都県境区間が通行止めとなったが、名神の大津IC~京都東ICを代替ルートとして無料開放し、多くの通行者を安全に誘導した。名神は、単なる移動の利便性を超え、
・物流
・観光
・災害対応
と幅広く地域経済と社会の基盤を支えているのだ。