ドクターヘリの“限界”を突破? 年間維持費「2.5億円の壁」を破る空飛ぶクルマの経済学
最新鋭の電動垂直離着陸機(eVTOL)が日本の医療物流に挑む。片道30分かかる救急空白地への医薬品輸送や医療従事者移送の効率化を目指し、エアバスや三菱倉庫らが実証実験を実施。将来的な社会実装と運用コスト低減が期待される。
eVTOLで救急輸送革新

航空宇宙最大手エアバスの子会社、エアバス・ヘリコプターズ・ジャパンと、メディセオ、三菱倉庫の3社は、2024年12月18~20日に最新鋭の電動垂直離着陸機(eVTOL)を使った実証実験を行った。実験では、自然災害発生時を想定し、大阪府と兵庫県の都市部、山間部、離島の3ルートを対象に、医薬品輸送や医療従事者の移送が可能かどうかを検証した。
3社は、実証結果をもとに行政との連絡体制を整備し、飛行申請や離発着場の許可手続きなども確認した。社会実装に向けた検討を本格化させる方針である。日本には
・片道15分以上かかる救急空白地
・ドクターヘリが離着陸しにくい狭小地
が数多く存在する。eVTOLの導入は、救急搬送の効率化だけでなく、狭い場所での離着陸や移動の容易化にもつながると期待される。近年、世界的な大手企業の参入により、eVTOLの開発や実証実験に取り組む企業が急速に増えている。
山間地や孤立集落で重傷者が発生すると、救命は極めて困難になる。呼吸停止後10分を過ぎると半数が死亡するとされる。しかし、ドクターヘリが常駐する病院から現場まで片道30分かかるケースが多い。
ドクターヘリの配備には地域差があり、過疎地域では導入が遅れている。年間約2億5000万円という維持費の高さがその要因である。
2024年1月1日に発生した能登半島地震では、主要道路が寸断され、救助活動や支援物資の輸送が滞った。道路の陥没や大きな段差のため、通常より倍近くの時間を要するケースもあった。結果として、1週間経過してもすべての避難所に物資を届けられなかった。
大規模災害が発生するたび、医薬品を含む支援物資の輸送は重要課題となる。地域ごとの脆弱性は異なり、状況に応じた試行錯誤が欠かせない。