ドクターヘリの“限界”を突破? 年間維持費「2.5億円の壁」を破る空飛ぶクルマの経済学

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最新鋭の電動垂直離着陸機(eVTOL)が日本の医療物流に挑む。片道30分かかる救急空白地への医薬品輸送や医療従事者移送の効率化を目指し、エアバスや三菱倉庫らが実証実験を実施。将来的な社会実装と運用コスト低減が期待される。

「空飛ぶクルマ」の実証

 昨今、世界各国の大手企業が「eVTOL」の技術開発や実証実験を加速させている。滑走路が不要で都市部や狭いスペースでも運用可能であるうえ、自動飛行との親和性が高い点が大きな特徴だ。日本では「空飛ぶクルマ」とも呼ばれている。

 三菱倉庫、メディセオ、エアバスは、この空飛ぶクルマの社会実装を目指し、実証実験を実施した。エアバスは開発したeVTOLのシミュレーションを担当。メディセオは過去の災害対応経験を踏まえ、医薬品配送手順の策定と検証を担った。三菱倉庫は大阪支店桜島第一営業所の岸壁エリアを離発着場として提供した。

 実証では、緊急時に必要な関係者や手続きの流れをシミュレーションできた。これにより、社会実装に向けて各行政との連絡体制や飛行申請、離発着場の許可申請などの手順確認が進められる見込みである。

 他地域でも企業が協力して空飛ぶクルマを活用した医療物流の実証実験を進めている。伊藤忠商事は株式会社竹山やAIR WINGS合同会社と共同で北海道・内浦湾で実験を実施した。陸路だと2時間以上かかる距離を、湾を空路で横断することで最短28分で輸送できることを確認した。

 さらに、ドイツで2020年に設立されたERC Systemは、緊急医療ケアが可能な広さの客室を備えた空飛ぶクルマのデモ機を公開した。内装は医療従事者と連携してカスタマイズされており、医療機器と患者を同時に輸送できる。今後、ダミー飛行による検証も予定している。

 大規模自然災害が発生した際には、製薬企業が製造した医薬品を医療機関に安全に届けるだけでなく、医薬品供給体制を継続的に維持することが求められる。医療物流市場の活性化は、こうした課題の解決に直結すると考えられる。

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