「救急搬送」の遅れが命を奪う――事故率0.01%も「到着遅れ」が示す制度的課題、愛知県男性死亡から考える
愛知県春日井市での救急車とトラック接触事故は、搬送遅延により77歳男性が死亡する事態に発展した。2024年度には救急搬送の63%が高齢者で、出動は約4.1秒に1回のペースに達しており、官民連携によるAI・交通インフラ活用の再発防止策が急務である。
緊急交通路の重要性

日本では、大規模災害発生時に救出や救助、物資輸送などの応急対策を円滑に行うため、公安委員会が一部路線を緊急交通路に指定している。災害対策基本法第76条第1項では、災害時にこの路線で一般車両の通行を禁止または制限できると規定しており、都市部を中心に各都道府県で運用されている。
海外では、米国の消防車専用「FIRE LANE」のように、渋滞による現場到着遅延を防ぐための専用通路整備も進められている。
国内では、救急医療現場の担い手不足や長時間労働に対応するため、政府はタスクシフト・シェアを推進している。これは従来の業務を他職種に移管または共同で実施するもので、救急医療関係者の健康確保や業務負担の最適化、医療サービスの質向上が期待されている。
さらに、消防庁消防大学校消防研究センターとNTT、NTTデータは2018年からビッグデータを活用した共同研究を進め、自治体と連携して実証実験を実施している。道路の段差や高低差情報をデータベース化し、走行ルートや道路状況を案内する検証や、救急事案が発生しそうな地域や時間を予測して救急隊の最適配置を支援する検証が行われた。社会実装されれば、搬送時の安全性確保に加え、救急車の現場到着から病院収容までの時間短縮が可能である。