「救急搬送」の遅れが命を奪う――事故率0.01%も「到着遅れ」が示す制度的課題、愛知県男性死亡から考える
緊急車両の運行最適化

昨今、交通事故件数の抑制に向けて官民でさまざまな取り組みが進んでいる。ベンチャー企業のT2(東京都千代田区)は、新東名高速道路の駿河湾沼津サービスエリア(SA)~浜松SA間約116kmで、90分間ドライバー未介入による自動走行に成功したと発表した。さらに、同社はアドダイス(台東区)と連携し、2025年3月から5月にかけて運転中の眠気リスクをAIで予測・可視化する実証実験を実施している。トラックの安全輸送を目指し、AIによる眠気スコアの精度向上を狙う取り組みだ。
日立製作所は、救急需要予測AIシステムを提供している。AIが各消防本部・消防局の特性を学習し、救急需要や現場到着時間を予測するものである。導入により救急車の適正配置や増隊計画の立案をサポート可能である。
警察庁も交通管理の最適化を進めている。光ビーコンを活用した新交通管理システム(UTMS)の開発・整備を推進し、その一環として、信号を制御して緊急車両を優先走行させる現場急行支援システム(FAST)を各都道府県で整備している。これにより、道路幅が狭い片側1車線道路でも現場急行時間の短縮や緊急走行に伴う事故防止が期待できる。
さらに、交通情報提供システム(AMIS)により、カーナビや情報板でリアルタイムに交通情報を提供し、交通流の分散を促している。交通安全の啓発活動も積極的に展開され、ホームページ公開やチラシ配布、イベント開催なども行われている。
加えて、三重県や茨城県など一部地域の病院では、救急搬送の迅速化を目的に有料化が進んでいる。紹介状なしで受診した際の
「選定療養費」
を活用し、医師が緊急性のない軽症者と診断した場合に適用される制度だ。地域の救急車リソースを確保するため、中核病院では「病院救急車」を導入しており、救急医療機関が連携して運用している。