江ノ電ファン必聴? 「路面電車が往くこの街で……」 新進気鋭女性シンガー・井上園子が紡ぐ、じっと我慢を超えて夢を引く街の旋律

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2025年8月、井上園子が江ノ電沿線を描いたCDシングルを発表した。時速15km前後の路面電車と偶然性を象徴に、効率偏重の都市生活で失われた「ゆっくりとした時間」の価値を再提示し、令和世代の共感を呼んでいる。

江ノ電と奏でる新時代

井上園子『たのしいくじびき』CD(画像:P-VINE)
井上園子『たのしいくじびき』CD(画像:P-VINE)

 2025年8月20日、シンガーソングライター井上園子はCDシングル「たのしいくじびき」を発表した。

「小学館のくじびき」シリーズの公式テーマソングとして書き下ろされ、歌・アコースティックギター・鍵盤ハーモニカ・パーカッションまで本人が全パートを手掛けるセルフ・プロデュース作。8cmディスクというレトロなフォーマットでのリリースも話題を呼び、発売初週から全国のレコード店で小規模ながら確実に動きを見せた。

 楽曲には「路面電車」が出てくる。湘南在住を公表している井上にとって路面電車は江ノ島電鉄線(江ノ電)だろう。生活と地続きの存在だ。沿線に潮騒を響かせながら、速度を誇らず、ただ淡々と軌道を進むその姿は、近代化と観光化のはざまにある地域の時間感覚を象徴する。歌詞の反復

「路面電車が往くこの街で/じっと我慢ももう飽きた」

は、単なる描写を超え、聴き手に現在地を再認識させる触媒のように作用している。

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