「昔はバイトで買えたのに」 新型プレリュード617万円、高額設定にネット反発で若者は遠のくのか?

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平均年収がほぼ横ばいのまま30年が過ぎるなか、ホンダが復活させたプレリュードは最低価格617万円という高水準に達した。かつてアルバイトで手が届いた「デートカー」が、今や年収の約1.3倍に跳ね上がり、若者との距離が広がる。技術投資や世界市場戦略、円安・物価高が絡む構造的要因の一方で、国内所得停滞が自動車文化を細らせつつある現実を浮き彫りにしている。

若年層切り離す高価格戦略

Honda S+ Shiftドライブモードスイッチ(画像:本田技研工業)
Honda S+ Shiftドライブモードスイッチ(画像:本田技研工業)

 国内の実質賃金はバブル経済期後半の平均467万円から、この30年ほぼ横ばいだ。経済政策の効果が限定的で、額面こそ変わらないが購買力は低下している。車両価格だけがグローバル基準で上昇し、円安が続けばメーカーは海外市場を重視せざるを得ない。

 日本では税金、保険料、車検など車両維持コストの負担が欧米より高い。若者を対象にした調査でも、購入時の初期費用だけでなくランニングコストの増加が購入を阻害する要因として挙げられている。さらにサブスクやカーシェア、レンタカーといった

「所有しないモビリティ」

が普及し、購入の必然性は薄れた。所得停滞、高負担、物価上昇という三重苦のなかで、若者は新車購入が困難となり、中古車への需要にとどまる構造が定着している。

 ホンダはSUVやミニバン市場で後手に回り、ブランド再構築を迫られている。そこで50代を中心としたアクティブシニアにノスタルジーを訴求し、プレリュードを高付加価値商品として少量でも利益を確保する戦略に動いたと読み取れる。だが、若年層のモビリティ文化を切り捨てれば、将来の市場基盤をさらに縮小させかねない。長期的に妥当な路線かどうかは残る問いだ。

 市場の声に応えるためには、いくつかの方向性が考えられる。第一に、環境性能を備えつつ200万~300万円帯の小型スポーツを再構築することだ。かつてのCR-Xやシルビアのように電動化で再現し、グローバル小型スポーツカーとして展開すれば中国やアジア市場の電動車戦略への対抗策ともなる。第二に、若者支援スキームの拡充がある。メーカー主導でサブスクや残価設定ローンを低利化し、自治体や大学と連携したカーアクセス制度を整備すれば、若年層の市場参入を後押しできる。第三に、ブランド戦略の刷新が欠かせない。懐古主義に依存せず、新世代が共感できる物語を提示する必要がある。都市型の電動スポーツを

「シティコミューター」

として再定義する発想も有効だろう。

 参考となる成功例は既にある。トヨタのGR86は300万円台に抑え、若者が手を伸ばせる価格で一定の成果を上げた。スズキのスイフトスポーツも低価格ながら運転の楽しさを提供し、国内外で評価を得ている。プレリュードも同様の戦略を採れば別の展開があったかもしれないという“if”が浮かぶ。

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