なぜ「なめ猫免許証」は1200万枚も売れたのか?――権威を遊びに変え、若者心理を掌握した社会現象を再考する

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1981年、免許証を模したカードが1200万枚売れ、関連市場は推計1000億円に達した――学ラン姿の子猫が社会現象となった「なめ猫」ブームだ。暴走族を戯画化しつつ、移動の象徴を遊びへ転換した仕掛けは、制度と文化の摩擦を映し出し、モビリティが単なる交通機能から社会的記号へ変わる潮流を先取りしていた。

推計経済効果は「1000億円」

「なめ猫」免許証のイメージ(画像:(C)SATORU TSUDA、ゼネラルステッカー)
「なめ猫」免許証のイメージ(画像:(C)SATORU TSUDA、ゼネラルステッカー)

 1980年代初頭、日本の街を席巻した「なめ猫」ブーム。学ランやセーラー服を着た子猫が、バイクを背に「全日本暴猫連合」を名乗る――その光景は、一般的なキャラクター商品以上の意味を持っていた。

 当時の推計経済効果は1000億円、関連商品は500種類以上。「なめ猫」はキャラクター消費の成功例であると同時に、モビリティ文化の変容を映し出す「鏡」でもあった。

 本稿では、社会背景と消費動向、交通や移動文化との関わり、制度上の課題とその影響、そして現代への示唆の四つの視点から分析する。各視点は互いに関連し、当時の状況と現在の課題を明確に浮かび上がらせる。

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